歯科医療のデジタル化が確実に進んでいる現在。
廉価版の口腔内スキャナーも、各社から販売されるようになった。しかし、実際に医院に導入するとなると「大手歯科医院でないと使いこなせない?」「従来法で間に合っているし…」などと考え、二の足を踏んでいる先生も多いではないだろうか。
今回WHITE CROSSでは、デジタルデンティストリーのパイオニア、小池軍平先生のクリニック(神奈川県横須賀市)を訪問した。
クリニックがあるのは、横須賀の閑静な住宅街。ドクター1名と常勤歯科衛生士1名、非常勤歯科衛生士が3〜4人という、ごく一般的な規模のクリニックである。
しかし、診療フロアに伺うと、まさしくそこは数々のデジタル機器が揃う「デジタルデンティストリーの最前線」であった。
小池歯科医院の外観。「デジタル」というよりはむしろ温かみを感じるデザイン
地方の閑静な住宅街に佇むクリニック
小池軍平先生
神奈川県横須賀市出身。神奈川歯科大学卒業後、横須賀市にて開業。光学印象式CAD/CAM装置を臨床の用い数多くの症例を手がける。その傍ら、デジタル歯科普及のため大学での後進の育成、ほか各地にて講演活動を行う。
デジタルデンティストリーのパイオニア × 保険医
デジタル(口腔内スキャナーなど)を導入したのはいつですか?
15年ほど前に、セレックを導入しました。
実は27歳で開業していて、今の場所は3軒目になるのですが、2軒目の歯科医院の際に購入しました。
この歯科医院を開業して10年になるのですが、デジタルありきで歯科医院設計、といったことは特に考えていませんでした。
1階の歯科衛生士専用のユニットを紹介する小池先生
この医院は、熊谷崇先生(山形県酒田市、日吉歯科診療所)のオーラルフィジシャンの考えに基づいた歯科医院にしたいと考えて設計したんです。
1階は歯科衛生士だけのフロアにしていて、歯科衛生士用のチェアが3台あります。2階が診療フロアになるのですが、患者さんには「しっかり1階でメインテナンスしてくださいね。2階にいる僕には会わないようにしてください、階段上がってくるときには覚悟してね」と話しています(笑)。
診療室フロアの様子。フロアを囲うようにオーラルスキャナーが並ぶ
パノラマで撮影(音声なし)
「デジタルは補綴のもの」というイメージがあったので意外です。
そうですね。補綴物製作に使用するというイメージはまだ根強いと思いますが、これからはコミュニケーションにも活躍するツールになると思っています。小児や矯正のときなどにも使用しています。
例えば、PCR。プラークを染め出しした後、患者さんに口腔内を確認いただくと思うのですが、最後臼歯遠心部の磨き残しなどはミラーなどでも見づらいのが現状です。ところが、オーラルスキャナーで撮影すれば、自分の口腔内の状態をパネルで動かしながら確認することができます。
染め出し後の口腔内をスキャンし、説明する様子
患者さんだけでなく、歯科医師やスタッフとのコミュニケーションにもどんどん活用されていくと思います。
矯正医への申し送りに口腔内スキャナーのデータを活用
あとは、より患者さんのことを考えた機能が、これからの最新機種にはどんどん盛り込まれていくと思います。例えば、X線フリーでカリエスがわかるスキャナーなどがすでに販売され始めています。被曝することがないので、小児の患者さんも安心して使用することができます。
白く光っているところがカリエス
デジタルの進化は加速するばかりですね。今後、デジタルと歯科との関わりはどうなっていくとお考えですか。
「いかに臨床に落としこんでいくか」になっていくと思います。
コミュニケーションツールという観点からすると、今後は歯科医師だけでなく歯科衛生士や歯科助手もオーラルスキャナーを活用していくようになると思います。
破折した歯牙の破折線もここまでスキャンできるように
録画した動画を患者さんと一緒に確認することができる
デジタルを使えば何でもできるようになる、と言えばそうだとも思うものの、結局はデジタルもハサミなどの道具と同じなんです。
デジタルにも適材適所があります。全部が全部、デジタルに取って代わる必要もないと考えています。デジタルがどんなに進んでも、アナログに敵わない分野は絶対にありますしね。
ただ、デジタルで「できるけどやらない」というのと「できないからやらない」は全然違うと思うんです。
デジタルとアナログの住み分けが、とても重要になってくると思います。
ご厚意で診療室にあるオーラルスキャナーを集めていただいた
WHITE CROSSライブからのお知らせ
小池先生がライブセミナーに登壇します。デジタルでの長期症例や、コミュニケーションツールとしての使用方法、診療報酬改定の話など、具体的な実例を中心にお話いただきます。この機会にぜひご覧ください!
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。