・医科や口腔外科等への紹介状の書き方についてコピー&ペーストして利用できる例文は? ・紹介状をササッと適切に書くコツ・ポイントを口腔外科医が解説! ・受ける口腔外科医が紹介状に追加で記載しておいてほしい項目とは? |
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はじめに
みなさんは、医科や口腔外科等への診療情報提供書・紹介状の書き方について、困った経験はありませんか?
「口腔外科疾患に関する紹介状の文面が思いつかない」「医科歯科連携が重要なのはわかるけど、内科や耳鼻科、整形外科等への紹介状の書き方に自信がない」そんな先生方のために、診療で忙しい合間でも、ササッと適切な紹介状が書けるツールをご紹介します。
この記事では、診療情報提供書の書き方をわかりやすく解説し、コピー&ペーストして利用できる例文となっています。WordとPDFデータでも例文つきでダウンロードが可能ですので、自院の紹介状ツールとしてぜひ活用してみてください。
第5回は、抜歯前の対診後編として、以下3つの場合の紹介状の書き方について解説します。
・心疾患
① ペースメーカーや埋込み型除細動器(ICD)装着患者の場合
② 人工弁置換術後や先天性心疾患患者の場合
・透析患者
・MRONJ
① 骨粗鬆症患者の場合
② 乳がん骨転移患者の場合
③ 関節リウマチ患者の場合
心疾患を有する患者に対する抜歯前の対診
① ペースメーカーや埋込み型除細動器(ICD)装着患者の場合
【コピペOK】参考例文
平素より大変お世話になっております。
患者様はう蝕(むし歯)の治療希望で当院を受診され、今後外来局所麻酔下での抜歯処置(手術時間15分程度)を行う予定としております。
患者様には不整脈の既往歴があり、ペースメーカーが挿入されているとお伺いしております。現在の循環器の状態、および抜歯に際しての注意事項等がありましたらご教示いただければ幸いです。また、ガイドラインに従って、抗血栓薬の内服は継続のまま行う予定です。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご高診の上ご加療の程よろしくお願いいたします。
紹介状を書く際のコツ&ポイント
予定している歯科口腔外科処置(処置名や手術予定時間、局所麻酔下か全身麻酔下か、局所麻酔薬の使用予定量)の記載をおすすめします。
Tips
ペースメーカーと植込み型除細動器(ICD)装着患者は、抗血栓薬を内服している場合が多いため、外科処置の際は注意が必要です。
② 人工弁置換術後や先天性心疾患患者の場合
【コピペOK】参考例文
平素より大変お世話になっております。
患者様は歯周炎の治療希望で当院を受診され、今後外来局麻下での抜歯処置(手術時間20分程度)を行う予定としております。
患者様には先天性心疾患(ファロー四徴症)の既往歴があり、貴院に受診中とお伺いしております。
現在の循環器の状態、および抜歯に際しての注意事項等がありましたらご教示いただければ幸いです。また、ガイドラインに従ってアモキシシリン2gを処置1時間以内に内服後、抜歯を行う予定です。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご高診の上ご加療の程よろしくお願いいたします。
紹介状を書く際のコツ&ポイント
予定している歯科口腔外科処置(処置名や手術予定時間、局所麻酔下か全身麻酔下か、局所麻酔薬の使用予定量)の記載をおすすめします。
Tips
成人におけるIEの基礎心疾患別リスクが中等度以上の場合、抜歯・歯周外科・インプラント・スケーリング等で出血を伴い菌血症が誘発される処置の際には予防的抗菌薬投与(アモキシシリン2g)が必要
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透析患者に対する抜歯前の対診
【コピペOK】参考例文
平素より大変お世話になっております。
患者様はう蝕(むし歯)の治療希望で当院を受診され、今後外来局麻下での抜歯処置(手術時間20分程度)を行う予定としております。
患者様は現在、貴院にて透析をされているとお伺いしております。
現在の腎機能の状態、および抜歯に際しての注意事項等がありましたらご教示いただければ幸いです。また、抜歯後の抗菌薬は腎機能を考慮して、アモキシシリン250mgを2回/日(朝・夕)3日分とカロナール200mgを頓服で処方予定としております。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご高診の上ご加療の程よろしくお願いいたします。
紹介状を書く際のコツ&ポイント
予定している歯科口腔外科処置(処置名や手術予定時間、局所麻酔下か全身麻酔下か、局所麻酔薬の使用予定量)の記載をおすすめします。
Tips
「臨床ではeGFR(推算糸球体濾過量)が指標として用いられ、腎臓が老廃物を尿へ排泄する能力を示します」
・口腔外科処置は透析日を避ける
・腎機能、CCr(クレアチニンクリアランス)が低下しているため、投与量の調整が必要
・抜歯後等の処方例:アモキシシリン250 mgを2回/日(朝・夕)3日分とカロナール200mgを頓服で処方する
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MRONJリスクのある患者に対する抜歯前の対診
① 骨粗鬆症患者の場合
【コピペOK】参考例文
平素より大変お世話になっております。
患者様はう蝕(むし歯)の治療希望で当院を受診され、今後外来局麻下での抜歯処置(手術時間15分程度)を行う予定としております。
患者様には骨粗鬆症の既往歴があり、貴院に受診中とお伺いしております。
フォサマック錠を約2年間内服されているとのことですが、ガイドラインに従って継続のまま抜歯を行う予定です。
現在の骨粗鬆症の状態、および抜歯に際しての注意事項等がありましたらご教示いただければ幸いです。
抜歯後に万が一、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)が発症した際はまたご相談させていただくことがあるかと思います。
お忙しいところ大変恐縮ですが、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
紹介状を書く際のコツ&ポイント
予定している歯科口腔外科処置(処置名や手術予定時間、局所麻酔下か全身麻酔下か、局所麻酔薬の使用予定量)の記載をおすすめします。
Tips
・MRONJ:薬剤関連顎骨壊死
・BP製剤:ビスホスホネート系薬剤(高用量:ゾメタ点滴静注・ゾレドロン酸点滴静注など、低用量:フォサマック錠・ボナロン錠・ボンビバ錠・ボノテオ錠・リカルボン錠・ミノドロン酸錠・アクトネル錠・ベネット錠など)
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② 乳がん骨転移患者の場合
【コピペOK】参考例文
平素より大変お世話になっております。
患者様は歯周炎の治療希望で当院を受診され、今後外来局麻下での抜歯処置(手術時間20分程度)を行う予定としております。
患者様には乳がんの骨転移の既往歴があり、貴院に受診中とお伺いしております。
ランマーク皮下注を約1年間行っているとのことであり、ランマーク皮下注は高用量ARA(Dmab製剤)のため、今後の歯科治療方針を検討しているところです。ガイドラインでは、重度歯周病など顎骨に明らかな感染源が存在する場合は、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)発症リスクを引き上げているため抜歯を前向きに検討すべきとされており、早めの抜歯を予定しております。
現在の病状、および抜歯に際しての注意事項等がありましたらご教示いただければ幸いです。
抜歯後に万が一、MRONJが発症した際はまたご相談させていただくことがあるかと思います。
お忙しいところ大変恐縮ですが、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
紹介状を書く際のコツ&ポイント
予定している歯科口腔外科処置(処置名や手術予定時間、局所麻酔下か全身麻酔下か、局所麻酔薬の使用予定量)の記載をおすすめします。
Tips
・ARA:Dmab製剤とBP製剤の骨吸収抑制薬のこと
・Dmab製剤:デノスマブ製剤(高用量:ランマーク皮下注、低用量:プラリア皮下注)
③ 関節リウマチ患者の場合
【コピペOK】参考例文
平素より大変お世話になっております。
患者様はう蝕(むし歯)の治療希望で当院を受診され、今後外来局麻下での抜歯処置(手術時間20分程度)を行う予定としております。
患者様には関節リウマチの既往歴があり、貴院に受診中とお伺いしております。
リウマトレックス(メトトレキサート、MTX)を内服しているとのことですが、12.5mg/週以下の場合はガイドラインに従って継続のまま抜歯を行う予定です。
また、プラリア皮下注を約1年間行っているとのことですが、低用量ARA(Dmab製剤)のためガイドラインに従って継続のまま抜歯を行う予定です。
現在の関節リウマチの状態、および抜歯に際しての注意事項等がありましたらご教示いただければ幸いです。
抜歯後に万が一、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)が発症した際はまたご相談させていただくことがあるかと思います。
お忙しいところ大変恐縮ですが、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
紹介状を書く際のコツ&ポイント
予定している歯科口腔外科処置(処置名や手術予定時間、局所麻酔下か全身麻酔下か、局所麻酔薬の使用予定量)の記載をおすすめします。
Tips
・リウマトレックス(メトトレキサート、MTX)を内服している場合は、口腔内のMTX関連リンパ増殖性疾患に注意
・MTXを12.5mg/週以下は継続、12.5mg/週以上は主治医と相談する
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参考文献はこちら!
本記事は、執筆者である田島聖士先生の個人サイトのうち、「【コピペでOK】医科や口腔外科等への診療情報提供書の例文」を引用改変し作成しています。その元記事もぜひ参考にしてください。
【インプラント コミュニティ「ImplaDetect」】
2023年に発足し、著者が管理者として運営しており、2024年5月現在、メンバー2,456名とインプラントメーカー28社中、21社にご協力いただいております。まだ参加されていない方は、ぜひ参加申請をしていただければと思います。
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。