この記事のポイント ・ワールドデンタルショー2023で一際大きなブースを構えていたモリタ社のブースの魅力をたっぷりお届け。 ・会場の半分のスペースををジャックした『MORITA DENTALAND』では、治療の段階ごとにモリタ製品を体感することができた。 ・世界初、日本初を数多く誇るモリタ社の製品を深く知ることができるブース『MORITA MUSEUM』は、まさに発見と気づきの場であった。 |
はじめに
パシフィコ横浜では9月29日〜10月1日の3日間、「The 9th WORLD DENTAL SHOW 2023」が開催された。会場には54,494名が来場し、大きな盛り上がりを見せるイベントとなった。
今回のデンタルショーは、展示ホールとノース会場の2ヶ所でさまざまなブースが出展されていた。その中でも、一際大きなブースを構えていたのが株式会社モリタ社。両会場にブースを構え、ノース会場では会場全体の半分近いスペースを確保して、さまざまな体験ができるブースが用意されていた。
今回は、多くの来場者を賑わせたモリタ社のブースについてレポートする。
会場2ヶ所のモリタブースではまったく違うコンセプトで来場者を楽しませた
ノースの半分近いスペースをジャックした、「MORITA DENTALAND」とは?
たくさんの来場者を迎え入れたノース会場のモリタ社のブース『MORITA DENTARAND』では、口腔内の侵襲度合いに応じた治療体系に準じ0〜9の10ヶ所の体験ブースが設けられていた。
各ブースの内容は以下の通りである。
0:口腔検査
1:セルフケア
2:歯面ケア
3:アライナー矯正治療
4:歯周病治療
5-1:保存修復
5-2:補綴修復
6:歯内療法
7:外科手術
8:欠損治療
9:義歯
加えて、以下のブースを設けられていた。
・DX(MDS、XR、MDSC)
・MTS(モリタトレーニングセンター)
・訪問診療
・インフェクションコントロール
MTC(モリタトレーニングセンター)コーナーではマイクロスコープを活用したデジタル時代に沿ったプレパレーションのセミナーが行われ、DXコーナーではXRを用いた院内空間体験と院内のすべてのデジタルデータのフローを紹介していた。
来場者は、自分が興味のある分野に行き、最新製品のハンズオン体験を行うことができるブースとなっていた。
ゼロナインコンセプトのブースの様子
今回、「MORITA DENTALAND」では、ブースの一部を体験させていただいたので、レポートする。
モリタのトレーニングセンターで実習デモを実施!
マイクロスコープを体験できるMTC(モリタトレーニングセンター)では、実際に機器に触れて使用感を体感できる実習デモが開催されていた。
マイクロスコープデモ実習の様子
使用方法については、セミナーも開催されており、多くの人で賑わった。
実習デモの様子
近未来の歯科はこうなる?!バーチャラボをXRで生体験!
DX(MDS、XR、MDSC)のコーナーでは、モリタ社が進める歯科DXの数々が披露された。
その中でもXR体験では、目の前にバーチャルラボが映し出された。歯科医院の設計において、バーチャルにより実際の棚の位置や水道の位置を見ることを可能とした。
「棚がもう少し高い方が良いな」「人が通るスペースが意外と狭い」など、これまで完成形でしかわからなかった部分を設計の段階で体験できるのだ。
XRにてバーチャラボ体験の様子
バーチャルラボ動画で特別公開!
“見えないを魅せる”『MORITA MUSEUM』で魅せた「こだわり」と「意図」
一方、展示ホールのブースでは、『MORITA MUSEUM』と名付けられた博物館のようなブースが設営されていた。
モリタミュージアム入口の様子
なぜ、このデザインなのか。なぜ、この機能なのか。なぜ、このつくり方なのか。
モリタ社の製品を必ず一度は使用したことがある歯科医療従事者のみなさんに、今まで見えていかなった、気づいていなかったモリタ社の「こだわり」と「意図」を魅せたのが今回の『MORITA MUSEUM』であった。
エントランスに掲げられた“見えないを魅せる”
なぜ、水平位診療台が誕生したのか?
博物館のようなブースの入口をくぐると、モリタ社のロングセラーユニット「スペースライン」についての歴史が動画で学べるスペースがあった。来年で発売60周年を迎えることとなる1964年に発売された世界初の水平位診療台「スペースライン」。
それまでは立位での診療が常識だった歯科診療に衝撃を与えた。
モリタ社は、「スペースライン」開発時依頼ずっと“人が中心”の理念を変えていない。つまりユニットに乗る患者さんと、診療を行う歯科医療従事者のことを考えて作られているのだ。これが、「スペースライン」が長年愛されている根底にある部分なのではないだろうか。
初代「スペースライン」の展示
また、驚くことに初代「スペースライン」は、現在のモリタ社の各ユニットと形状がほとんど変わっていない。世界初の水平位診療台として当時開発した計算し尽くされた空間であることを学ぶことができた。
会場に訪れた歯科医療従事者からは、「懐かしい」「これ、使っていた」と感慨深い声が聞こえてきた。
初代「スペースライン」の実物が目の前にあるのは、貴重な機会であったことが感じられた。
スペースラインの診療空間を再現したコーナー
「スペースライン」は空間を結ぶという意味もこめられている。その診療空間をいかに使いやすく、快適に整えていくかを考えて開発された。
1963年(発売の前年)に、水平位診療が発表された当時から変わらぬ思いを体験することができた。
なぜ、自社生産にこだわるのか?
モリタ社のユニットには、機能だけでない見た目の美しさにもこだわりを持つ。
製品の裏側、作り手のこだわりが伝わってくる展示
常に使う側の立場になって「何が必要な機能なのか」「患者さんにとっての心地良さ」とは何かを考えていることが伝わった。
材質や見えない部分にも決して妥協しない。これだけの工程は、手間がかかり「手づくり」の部分もあるという。
自社工場で製作する歯科用ユニットのパーツ
自社生産にこだわる理由は、まったくブレることない“人が中心”の概念を貫くためであると感じることができた。だからこそ、モリタ社のユニットは、使用する先生の多様なご要望にも対応ができる。
歯科医師は子どもから大人まで、いくつもの分野にまたがってさまざまな分野の治療を行う。モリタ社は、そんな先生方のさまざまな要望をカタチにし続けている。
なぜ、この硬さなのか?
ウレタンフォームの展示の様子
モリタのチェアに使用されているウレタンフォームは、一般的なものに比べると 少し硬めに設定してある。
ここにもモリタ社のこだわりと意図があった。
「やわらかい方が座り心地が良いんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれない。しかし、長時間に及ぶ歯科診療において体をしっかりと支えるためには程よい硬さが必要なのだ。
モリタのウレタンフォームは実際に触り、硬さを確かめることができた
ウレタンフォームの展示では、このモリタ社の考える歯科診療における最適な硬さを実際に触って確かめることができた。驚いたことに、この硬さを維持するため、毎日の気温や湿度に合わせて原料の配合を調整し製造しているという。
この硬さに加えてチェアの動的な機構が重なり、背ズレ防止に繋がっています。
背ズレ防止の価値を気づきにくいことかもしれませんが、ドクターにも患者にもとてもメリットがあります。一回一回の背ズレによる体勢を直すストレス自体に気づいていない方が意外に多いのです。
隣に設置していたチェアでは、実際にその体験できるようにしており、上記のことを伝えると「なるほど」と驚かれるように新たな発見になっている方が多かった。
患者さんが治療に来られて「不快」に思わせない工夫が、モリタ社の人思いの理念である。開発を行う最初からそのような「こだわり」と「意図」を持って開発されていることが伝わった。
なぜ、モリタ社のツインタービンは壊れにくいのか?
プロジェクトメンバーが、諦めずに製作したという「ツインパワータービン」は、高速回転・高トルクを実現させた。
「モリタのタービンは壊れないよね、ずっと使っていられる」このように思う歯科医療従事者も多いのではないだろうか。
タービンの開発秘話
また、モリタ社は、実現不可能といわれていた「ゼロサックバック」のタービンの開発に成功している。展示では、開発までの決して楽ではない道のりについて知ることができた。
残念ながらタービンへのこだわり、開発秘話は商品カタログを見てもどこにも掲載されていない。
先生方にストレスを感じさせない、患者さんにもやさしい存在であってほしいというエンジニアの思いを魅ることができる展示であった。
初期モデルのマイクロCTが登場!
中でも、日本初の歯科・頭頚部用小照射野X線CT装置「3DXマルチイメージマイクロCT」は、その存在感の大きさに圧倒された。
今回の展示にあたり、日本大学歯学部付属歯科病院で設置していた初期モデルのものを、ブースに用意したとのこと。
3DXマルチイメージマイクロCT
『MORITA MUSEUM』では、製造の背景を深く知ることができるブースとなっていた。 モリタ社が手掛けた製品は、「こだわり」と「意図」がたくさん詰まっている。
歯科医療従事者は、患者さんに「不快」に思わせない工夫を行い、日々の診療を行っているだろう。ミラーを入れる角度、口角を引っ張る強さなど細心の注意を払っている。
モリタの製品は、そんな歯科医療従事者の思いと患者さんの気持ちなどを創業以来ずっと考えて製品を生み出していることを改めて感じることができた。
モリタ社がデンタルショーで魅せた2つのブースがすごかった!
何百社もの企業が出展する中、来場者の注目を一斉に集めたモリタ社の2つのブース、『MORITA DENTARAND』と『MORITA MUSEUM』。
5年ぶりの開催となったワールドデンタルショーにふさわしい、とても華やかで趣のあるブースと感じた来場者も多かったのではないだろうか。
今後もますますの発展が期待されている、モリタ社。歯科企業のトップを走り続けるモリタ社を、私たちも引き続き追いかけていきたい。
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。