1月25日、歯科医師会館にて、公益社団法人日本歯科医師会の定例記者会見が開催された。会見の内容をダイジェストでお届けする。
この記事のポイント ・1月の定例記者会見では、令和6年度の診療報酬改定と令和6年能登半島地震における対応について言及した。 ・令和6年能登半島地震における日本歯科医師会の対応として、被災地における歯科医療の実際や災害歯科チーム(JDAT)の状況を報告した。 ・海外諸国の歯科医療費に関する調査報告から、日本の歯科医療費が極めて低い状況であることがわかった。 |
冒頭あいさつ
会長の高橋英登先生は、日本歯科医師会定例記者会見であいさつを行い、令和6年度の診療報酬改定と令和6年能登半島地震における対応について言及した。
令和6年度の診療報酬改定については、賃上げ問題に対する対応が特にむずかしいが、引き続き全力で尽力していきたいと語った。
また、令和6年能登半島地震に対する災害対策では、実際に被災地に訪問したことを報告。災害関連死と言われる誤嚥性肺炎の防止や水不足などの深刻な問題に対して、必要な支援を行っていきたいと述べた。
冒頭あいさつを行う日本歯科医師会 会長 高橋英登先生
令和6年能登半島地震における日本歯科医師会の対応
専務理事の瀬古口精良先生は、令和6年能登半島地震のおける災害対策関係の報告を行った。
日本歯科医師会は、地震発生から約30分後である、1月1日の16時30分に災害対策本部を設置。
翌1月2日には、第1回対策本部を開催し、会員被害状況や支援物資等の対応について協議した。災害救助法が適用された新潟県や富山県、石川県、福井県歯科医師会会長宛には、「お見舞い文書」および「大規模災害発生時における歯科医療に係る支援物資要請確認票」をメールにて送信した。
1月3日には、SNS(Facebook・X)にて「災害時のお口のケア(動画)」を公開し、情報発信。その後1月5日、厚生労働省主催の「医療関係団体緊急連絡会議」には、会長の高橋英登先生と専務理事の瀬古口精良先生が出席するなど、行政の指示のもと必要な対応を迅速に行った。
1月8日には、会長の高橋英登先生と、副会長の蓮池芳浩先生(石川県歯科医師会所属)が被災地を視察。
続く1月19日には、災害歯科チーム(JDAT)の派遣予定について通知を行った1)。現在、災害歯科チーム(JDAT)の登録が、34都道府県で108チームとなり、各都道府県から登録いただいた歯科医療従事者に感謝の意を述べた。
日本歯科医師会 専務理事 瀬古口精良先生
被災地における歯科医療の実際
副会長の蓮池芳浩先生は、被災地を視察した際に体感したことを以下のように伝えた。
被災地では、水が出ていない。復旧には2ヶ月かかるとのことで、歯科診療はできない状況にある。避難所に行った際は、「水の使わない口腔ケア」に関するポスターを掲示し、支援物資の中では、特にポリデントが喜ばれた。そして大切なことは、被災された方のメンタルのケアであり、決して上から目線にならないように被災された方に接した。
また水が出ない際に、ユニットに繋げることで水が出るペットボトルタイプの製品について紹介した。緊急時には少しでも歯科診療を行えるような対応が必要であるとのこと。水が出ないということが、被災地の歯科医院やその患者を非常に苦しめていると述べた。
日本歯科医師会は地震発生後、早急に株式会社モリタや株式会社ヨシダなど、ユニットを扱うメーカーに掛け合い、このような製品が被災地で活用できるようにした。
写真は株式会社ヨシダのユニットに装着可能な製品
義援金の受付はこちら
専務理事の瀬古口精良先生は、現在約1,000万円の義援金が集まっていることを報告し、石川県歯科医師会へ送金予定であると述べた。
なお、義援金の受付期間は以下の通り。
第1次:1月12日(金)〜31日(水)
第2次:2月1日(木)〜29日(木)
銀行名:三菱UFJ銀行 市ヶ谷支店
口座番号:普通預金0161631
口座名義:公益社団法人 日本歯科医師会 義援金 シャ)ニホンシカイシカイ ギエンキングチ
※手数料は各自負担
※税務上の控除対象とはならない
※受領証が必要な場合は日本歯科医師会会計部門(kaikei9324jda@jda.or.jp)に連絡
1)令和6年能登半島地震の状況について【第4報】(日本歯科医師会)
海外諸国の歯科医療費に関する調査報告
常務理事の末瀨一彦先生は、9月21日からオーストラリアのシドニーで開催されたFDI(世界歯科連盟)世界歯科大会に日本歯科医師会代表団として出席したことを報告。その際に、各国の歯科医師会の協力を得て調査した、海外諸国の歯科医療費について調査報告結果の一部を報告した。
なお、現在は報告をまとめている途中であり、自費やその他の部分でも海外諸国との比較を行い、データを出していく予定であるとのこと。
海外諸国の歯科医療費に関する調査報告(資料をもとに編集部で作成)
また、海外各国とは保険制度や国の財政状況も異なることから、単純な比較することはできないとコメント。しかし日本の歯科医療費は、特に先進国と比較して極めて低い状況にあることを改めて認識することができたと述べた。
次回以降の診療報酬改訂時には、今回の海外諸国の歯科医療費に関する調査報告を活用するなど、適正な公的価格になることを期待したいと語った。
日本歯科医師会 常任理事 末瀨一彦先生
日本歯科医師会定例記者会見アーカイブ
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執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。