9月16日、中国の西安において、歯科医師ロボットによるインプラント手術が行われた。術中、スタッフが待機していたが、手術はロボットのみによって行われた。全自動で行われたインプラント手術としては世界初のケースとなる。
女性患者に対して、局所麻酔下にて2本のインプラントが埋入された。術前のシミュレーションと比較した誤差は、0.2〜0.3mm以内であり、手術は成功したという。
この歯科医師ロボットは、中国の第四軍医大学と北京航空航天大学の合同チームにより、4年かけて開発された。
出典: YouTube_World First Autonomous Dental Implant Robot Put into Use in China
術前処置として、スタッフが患者に歯科医師ロボットの誘導装置を固定し、ロボットに適切なポジショニング・術中の動き・器具の角度や深さなどをプログラミングした。その上で、ロボットの動作確認を行い、取得されたデータに基づいた微調整の後に、患者への局所麻酔・実際の手術が行われたという。
また、術中の患者の動きに合わせて、ロボットもその動きを自動調整することができるという。
歯科医師ロボットの発達としては、今年の3月7日に米国のアメリカ食品医薬品局(FDA)が、インプラントオペ専用のロボット Yomi を承認した。このニュースは、"Game-changing" となるテクロノジー。つまり、”医療のあり方を大きく変えうるテクノロジー”への承認などと報じられた。
今回の中国の歯科医師ロボット、米国のYomi共に、歯科医師によるヒューマンエラーをなくすことを目標の一つとしている。
また、現在中国においては、年間約100万本のインプラントが埋入されている一方で、技術水準を満たした歯科医師の不足が問題視されている。その解決策として、歯科医師ロボットへの期待が高まっている。
日本歯科医療への示唆
医療におけるロボティクスの普及には、目を見張るものがある。
医科の手術ロボットであるダ・ヴィンチ・サージカルシステムは、1999年に完成。2000年に FDA より承認されており、2016年までに全世界で3,803台が導入されている。同様に、米国においては全身麻酔のロボットや、遠隔診断ロボットなどが普及して久しい。
全て当初は、現場・学会などからの強い反発があったが、その有用性を示すデータが蓄積されるにつれて、その存在が受け入れられてきた。
この分野では難しいだろうという考えが通用しないテクノロジーの発達が見られる今日、皆保険制度に則った歯科医療機器開発が主として行われる日本において、同じような歯科医療機器が発達し、世界に羽ばたいていくことはあるのだろうか。
出典: South Chain Morning Post_Chinese robot dentist is first to fit implants in patient’s mouth without any human involvement
出典: Business Wire_Neocis Inc. Announces FDA Clearance for First Robotic System for Dental Implant Procedures
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。