26日、厚生労働省は新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の罹患を調べるPCR検査について、歯科医師による患者からの検体採取を認めると発表した。
PCR検査においては、検体に含まれるCOVID-19のDNAを増幅させ、その有無により陽性・陰性を判断する。そのため、PCR検査を行うには、検査機能を持つ医療機関や民間検査機関との連携が必要不可欠となり、厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)においては、検査結果がでるまでには1日から数日がかかると記載されている。
出典: 厚生労働省_令和2年4月26日 PCR検査に係る人材に関する懇談会 資料
26日に開催されたPCR検査に係る人材に関する懇談会の資料によると、医師法・歯科医師法に照らし合わせ、PCR検査を、
新型コロナウイルス感染症の診断を目的としたPCR検査のために行う鼻腔・咽頭の拭い液の採取については、「歯科医業」の範疇を超えており、これまで歯科医師が行うことはできないものと解している。
と位置づけた上で、
新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況を踏まえ、今後もPCR検査の需要が増加することが想定されるなか、医療提供体制を維持するためにも、口腔領域に知見を有する歯科医師にも検体採取に参加いただくことで検査体制を充実・強化することが急務
従来からの医師法の解釈との関係について整理が必要(医師法に抵触する行為が違法性阻却され得るか否かについての検討)
と記載されている。
その上で、「歯科医師によるPCR検査のための鼻咽頭の拭い液採取について(案)」として、
(1) 感染が拡大し、歯科医師による検体採取を認めなければ医療提供が困難になるという状況であること
(2) 安全性を担保した上で検体採取が実施されるために、実施者が必要な教育・研修を受けていること
(3) 実施に当たっては患者の同意を得ること
と記載された。(1)については、緊急事態宣言期間中や、感染拡大によりPCR検査の必要数が増大している状況などにおいて、地域に設置したPCR検査センターであって、検体採取に必要な医師、看護職員、臨床検査技師の確保が困難な場合が、具体例として示されている。
出典: 厚生労働省_令和2年4月26日 PCR検査に係る人材に関する懇談会 資料
今回の決定では、歯科医師が地域の検査所に赴くことを想定し、時限的・特例的な取り扱いにされるとのことである。また、大学病院などに勤務する歯科医師から対象になるという情報もある。
4月6日時点で安倍晋三首相は、 早期に1日2万件のCOVID-19のPCR検査を実施可能な体制を作り上げることを目標に掲げたが、検査数の実績値は4月13日の1日10,849件をピークに、平日の検査数としては4月24日金曜日の1日5,854件にとどまっている。様々な要因がある中で、人手不足の解消の対策として歯科医業の範囲を超えた協力が歯科医療に求められている。
今後、短期的に具体的なスキームが示され、4月中の研修開始が目指されているという。
歯科医師統計「歯科医師によるPCR検体採取について」
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執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。