1月16日、東京の飯田橋にて、株式会社M&D医業経営研究所の主催により新春経営セミナーが開催された。
新型コロナウイルス感染症(変異株)の拡大を受け、オンラインとのハイブリッド開催となる。
同社代表の木村氏は、日本医業経営コンサルタント協会の理事や歯科専門分科会の委員長を歴任。日本医業経営コンサルタント協会とは、厚生労働省の管轄する準公的資格で、実は医科病院の建設などにも深く関わっている資格だ。
本記事では、同セミナーの様子をレポートしたい。
木村氏はまず、新型コロナウイルスが医療費に与えた影響について解説した。
令和2年度の医療費総額は▲1.4兆円の減少であり、コロナ禍前の3年間が、平均0.7兆円で年々増加してきたことを考えると、実質▲2.1兆円の減少となるそうだ。診療科別の減少率では、小児科が▲22.2%、耳鼻咽喉科が▲19.5%と際立っており、歯科の減少幅は▲0.8%で他の診療科に比べて小さい。
そのような外部環境の中、今年春に控える診療報酬改定の方向性検討資料が厚生労働省のホームページに公開され始めた。
木村氏の解説によると、キーワードは前回改定から一貫しており、地域包括ケアシステムの推進、重症化予防、効率化・適正化、ICTの活用など、高齢社会を見据えたものになっている。
中医協(中央社会保険医療協議会)の論点からは、
・かかりつけ歯科医機能強化型診療所(か強診)のさらなる普及
・歯周病安定期治療(SPT)の包括範囲の見直し
・フッ化物利用の対象範囲の拡大
・口腔機能の管理(口腔機能低下症や口腔機能発育不全症の対応)の対象の拡大
・在宅医療や医科歯科連携におけるICTの活用を評価
などが今回の診療報酬改定に盛り込まれる可能性があるそうだ(2022年1月16日現在での予想)。
対策の方向性として木村氏は、か強診の取得と維持、定期予防管理型歯科医院を目指して歯科衛生士を確保すること、承継問題に備えて医療法人化を目指すこと、コロナ禍が始まって2年が経過することから、老朽化したコロナ対策を刷新することなどを挙げた。
受講生に配布されるテキスト
幸せな医院経営規模とは?
読者の歯科医師の先生方は、「幸せな医院経営規模」について考えたことはあるだろうか。
木村氏は長年に渡り歯科専門の経営コンサルタントとして、多くの医院の成長を支援してきた。成長した歯科医院の院長は、経済的にも社会的にも成功者であることに疑いの余地はない。
一方で、人事労務問題や莫大な固定費、借入金、それに伴う管理責任は経営者である院長の肩に重くのしかかり、不安やストレスは想像を絶する。資本主義のもとに拡大路線をとり続けることの光と影と言えるだろう。
木村氏は、すべての成功者が幸福な顔をしているとは言えないと自戒の念を込めて話す。
その傍らで、実に幸せそうな院長先生もいるのだという。
木村氏の分析によると、ユニット台数が6〜8台の医院では、医業収益が平均値でも中央値でも1億を超え、院長の年収は3千万程度になるとのこと。
職員数も10〜15名程度の規模であるため、スタッフ一人ひとりに目が届き、人事労務面でのストレスは少ない。経営のプロでなくとも安定した経営体として運営可能なため、ローリスクミドルリターン型の医院として、多くの院長先生の目標として推奨できると木村氏は話す。
無論、「幸せ」というのは個人の主観であり、上記に挙げた医院規模より小さくとも大きくとも優劣はない。
価値観が多様化し、正解が一つではない現代。
新年という節目に、歯科医院経営やご自身の人生について、ぜひ他人軸でなく自分軸で向き合ってみてはいかがだろうか。
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