この記事のポイント ・デノスマブは、RANKLに対するヒト化モノクローナル抗体であることから、骨吸収を阻害する骨粗鬆薬として広く使用されている。 ・今回の研究では、イギリスのデータベースから、ビスホスホネート製剤からデノスマブへ切り替えを行った患者と、経口ビスホスホネート製剤の継続投与を行った患者とで、2型糖尿病の発症リスクに及ぼす影響を推定。 ・デノスマブへの切り替えまたは開始は、経口ビスホスホネート製剤の使用と比較して、2型糖尿病のリスクを32%減少させる可能性を示した。 |
はじめに
中国・北京にあるChinese PLA General Hospitalは4月18日、骨粗鬆症患者におけるデノスマブの使用は、経口ビスホスホネート製剤の使用と比較して、2型糖尿病発症のリスクを低下させる可能性について発表した。
この研究は、中国とイギリス、アメリカ、ノルウェーにあるさまざまな専門機関の共同研究によるもの。研究成果は、英国医師会が発刊するインパクトファクター96.216の BMJ( British Medical Journal )に掲載された1)。
骨粗鬆薬デノスマブがもつ、糖尿病に対する効果
デノスマブは、RANKLに対するヒト化モノクローナル抗体であることから、骨吸収を阻害する骨粗鬆薬として広く使用されている。臨床ガイドラインでは、閉経後の女性、男性および骨折のリスクが高い「グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症」の患者に対する使用が推奨されている。
これまでの研究によって、2型糖尿病または糖尿病の既往がある骨粗鬆症患者でデノスマブによる治療を行ったグループは、ビスホスホネートまたはカルシウム、ビタミンD製剤で治療を行ったグループに比べ、グルコース恒常性が改善され、12ヶ月にわたる糖化ヘモグロビンの統計的に有意な減少が示唆された2)。
この研究では、約1,800万人のイギリス国民のデータが集約されている「IQVIA Medical Research Data(IMRD)」というデータベースから、ビスホスホネート製剤からデノスマブへ切り替えを行った患者と、経口ビスホスホネート製剤の継続投与を行った患者とで、2型糖尿病の発症リスクに及ぼす影響を推定した。
BP製剤と比較して、2型糖尿病の発症が約32%減少!
デノスマブの新規使用者4,301名と、経口ビスホスホネート製剤使用者21,038名が、平均2.2年間追跡調査された。
デノスマブ使用者の2型糖尿病の発症率は1,000人年あたり5.7人(95%信頼区間4.3~7.3)、経口ビスホスホネート製剤使用者の場合は1,000人年あたり8.3人(7.4~9.2)であった。デノスマブへの切り替えまたは開始は、経口ビスホスホネート製剤の使用と比較して、2型糖尿病のリスクを32%減少させる可能性を示した。
また、糖尿病リスクの高い糖尿病予備軍や肥満の患者においても、デノスマブが経口ビスホスホネート製剤と比較して、2型糖尿病のリスクを低下させることが示された。
2型糖尿病の累積発生率(グラフはBMJより引用)
***
今回の研究によって、2型糖尿病のリスクが高い骨粗鬆症患者の場合、デノスマブを使用することで糖尿病リスクが低下する可能性が明らかにされた。
糖尿病も骨粗鬆症も、歯科治療において注意すべき代表的な全身疾患として挙げられることが多く、それぞれの疾患に対し治療薬を服用している患者は多い。服用薬の種類を変えることで、糖尿病のリスクが抑えられ、歯科疾患の発症にも良い影響を与えることができるようになれば、歯科医療従事者にとって嬉しいニュースになるに違いない。
歯科に関連が深い全身疾患については、今後も引き続き研究を追っていきたい。