「親子へのアプローチ編」に続く第二弾。とくに成人患者は保健行動への関連因子が多く、「心理・態度」と「行動」が一致しないことがみられ、医療者側にとって「難しい・困った患者」と捉えられることも少なくない。本書は、成人患者への説明や保健指導でよく経験される場面を入り口に、その対応に有効な行動科学の理論について、個別性から一般性・普遍性を学ぶ構成とすることで、わかりやすく理解・習得・実践できる入門書とした。
●本書の見方・活かし方(深井穫博)

第1章
“怖い…不安…”“信じられない”
歯の喪失や治療に不安が強い患者の対応は?

事例1:痛みに対して敏感な歯科恐怖症患者へのアプローチ
(松岡順子,荒井郷子,深井穫博)
事例2:歯科治療に不安が強い患者へのアプローチ
-科学的根拠に基づいた医療を中心に(大野秀夫)
事例3:歯周病のリスクが高く,歯の喪失への不安が高まっている糖尿病患者へのアプローチ(佐藤保)
行動科学の目 認知行動療法を用いた歯科治療の不安・恐怖への対応
～認知行動理論に基づいたアプローチ～(深井穫博)

第2章
“入れ歯はイヤ!”“もっとよくなるはず!”
思い込みや医療不信が強い患者の対応は?

事例1:「歯を抜きたくない,入れ歯を入れたくない,でもインプラントは…」という患者のアプローチ(吉野浩一)
事例2:前医でのイヤな経験から「もう歯医者には行きたくない」と思っていた患者への対応(松岡順子,荒井郷子,深井穫博)
事例3:“もっと合った入れ歯はないの!”理想的な治療結果を求めて転院をくりかえした患者へのアプローチ(高柳篤史)
行動科学の目 患者の心理・行動への理解と対応
～ヘルス・ビリーフ・モデルを用いたアプローチ～(深井穫博)

第3章
“痛くなったらでいい!”“通う必要があるの?”
無断キャンセルや治療中断への対応は?

事例1:治療終了後すぐのアプローチ-定期健診を継続させるための第1ステップ(文元基宝)
事例2:かろうじて定期受診を続けている患者への来院中のアプローチ(津田真)
事例3:“キャンセル後の再来院は「チャンス」勇気をもってその理由を積極傾聴”無断でキャンセルが続く患者へのアプローチ(福原稔)
行動科学の目 さまざまな事柄の中で歯科の優先順位を高めるには
～MIDORIモデルによるアプローチ～(文元基宝)

第4章
“時間がとれなくて…”“自分の歯は問題ない!”
定期健診へのモチベーションどう高める?

事例1:「痛い所だけ治せばいい」という患者の定期健診がなぜ定着したか(深井穫博,荒井郷子,松岡順子)
事例2:転居で一度他院を受診した遠方在住の患者がなぜ戻ってきたか(深井穫博,松岡順子,荒井郷子)
事例3:“対応に納得いかず転院をくりかえし…”歯科情報の入手に積極的な患者の定期健診がなぜ定着したか(荒井郷子,松岡順子,深井穫博)
行動科学の目 定期健診における動機づけと自己決定の重要性
～動機づけ理論・自己決定理論に基づいたアプローチ～(深井穫博)

第5章
“わかっているけど…”“つい疎かに…”
セルフケアが定着しない患者の対応は?

事例1:歯みがきに問題のある患者へのアプローチ-自己効力感を高める(山本未陶)
事例2:歯間清掃が定着しない患者へのアプローチ-自己効力感尺度を利用して(山本和宏,岩井梢)
事例3:甘味摂取頻度に問題のある患者へのアプローチ-学習援助型健康教育を応用して(筒井昭仁)
行動科学の目 自己効力感を高める成人の患者への対応
～社会的認知理論を中心とした患者へのアプローチ～(中村譲治)

第6章
“やめるなんて無理!”“何度やっても失敗…”
喫煙患者への禁煙指導どう進める?

事例1:“自分に向き合って生まれた本当の自信”禁煙する意思のないハイリスク患者へのアプローチ(福原稔)
事例2:禁煙に無関心な患者へのスモールステップによるアプローチ(津田真)
事例3:“医療スタッフの連携プレーで禁煙をサポート”禁煙に関心のある患者へのアプローチ(文元基宝)
行動科学の目 患者の関心度に応じた禁煙指導法
～段階的変化モデル(ステージモデル)によるアプローチ～(文元基宝)

第7章
“本当につらくて…”“気になって仕方がない”
身体的・精神的ストレスが強い患者の対応は?

事例1:“来院者の訴えを素直な心で受け止めていますか?”治療後の咬合異常で不定愁訴が続く患者への対応(松岡奈保子)
事例2:脳卒中で倒れてマヒが残った患者へのアプローチ(川上誠)
事例3:“マスクを外して患者の話を聴こう!”口臭の悩みがある患者が来院した場合の対応(寺田壮平)
行動科学の目 さまざまな問題を抱えた成人の患者への対応
～行動理論やモデルだけでは解決が困難な患者へのアプローチ～(中村譲治)

●索引