6月27日の20時より WHITE CROSS live が開催された。講師の押村憲昭先生は歯科金属アレルギーに特化し、全国で講演活動を行っている。
おしむら歯科にはこれまで1000人以上の金属アレルギー患者が来院しており、普段の診療は全身に現れる患者のアレルギー症状を見ることから始まるという。また日頃から積極的に医科に歯科の情報を共有し、医科向けの書籍を執筆するなど連携を深めている。
今回は『金属アレルギーの基礎と臨床』と題し、日常的に金属を扱う歯科医師が必ず知っておきたい金属アレルギーの基礎知識と、医科歯科連携の始め方について2時間たっぷり解説した。
本レポートは講演のサマリーを報告する。
また、7月28日(日)24:00までの期間限定で録画配信が行われているためご活用いただきたい(記事末尾にご案内)。
金属アレルギーの基礎と臨床
金属アレルギー は、金属が触れた部位のみに反応する局所性と、原因とは離れた部位にアレルギー症状が出る全身性の2種類に分けられるという。
そのうち歯科金属アレルギーは全身性アレルギーに分類され、多くは手足に症状が発現するため、金属アレルギーの患者はまず皮膚科を受診することが多いそうだ。
歯科金属アレルギー治療の現状
押村先生は、歯科金属アレルギーの診断治療は決して単純ではないと話す。その理由として、鑑別すべき他の原因の多様性と特定の難しさ、治癒までの期間や費用面での患者負担などを挙げ、皮膚疾患患者を治療する上で必ず知っておくべき5つのポイントを紹介した。
歯科医師はこれらを確実に理解しておかなければ、治癒に至らないだけではなく患者の歯科不信につながりかねないという。
特に、歯科金属アレルギーの症状は、手足に現れる皮膚症状の原因のひとつにすぎないため、皮膚科との連携が必須であり、安易な除去は慎むべきと強調した。
皮膚科連携・パッチテスト
続いて金属アレルギーの診断に必須のパッチテストについて話がうつる。通常、パッチテストは皮膚科医が行うが、単に紹介状を送るだけでは満足な結果は得られないのだという。そこで押村先生は自身が連携している皮膚科とのファーストコンタクトの方法や連携が始まってからの手順、紹介状を作成する際のポイントなどを紹介した。
実はパッチテストは非常にデリケートな検査方法で、皮膚科医の9割が難しいと感じているのだという。押村先生は自身に行ったパッチテストの体験談を交え、皮膚科のリアルな実情も解説した。
歯科が知っておくべき全身症状
もちろん皮膚症状を引き起こすのは金属だけが原因ではない。押村先生は、感染根管が原因で幼い男の子に激しい皮膚症状が出た衝撃的な症例を提示し、これも歯科が医科に介入するべき理由として訴えた。また、歯牙由来の掌蹠膿疱症はすでに多く存在し、医科の論文にも掲載されている事実だという。
押村先生は他に内科とも連携し、糖尿病患者への歯科的介入を積極的に行っている。糖尿病との関わりについてはインタビューでも話していただいているのでご覧いただきたい。
「金属アレルギーは突然発症します。そして発症すると、その方のQOLは著しく低下します。だから僕ら歯科医師は極力金属を使わない診療を目指すべきです。保険診療だからと何も説明せずに金属を選択するのは、優しさではないと考えています。」
押村先生はこれまで関わってきた患者さんの声や治癒経過を報告し、金属アレルギーの恐ろしさを強調して講演を終えた。
質疑応答と録画視聴
生放送で行われた本セミナーには、全国から多数の質問がリアルタイムで寄せられた。
・矯正治療でステンレスワイヤーを入れて数日後手に水泡が出た患者さんがいます。掌蹠膿疱症だと思うのですがそんなにすぐ出るのでしょうか?
・カリエスなどが無く、口腔内に直接露出していないメタルコアなどから感作する可能性はあるのでしょうか?
・重金属イオンは体に蓄積して排泄されにくいと思いますがキレーションはされていますか? 等21問
録画視聴のお知らせ
本セミナーは見逃した方のために録画配信システムをご用意しています。
配信期間は7月28日(日)の24:00まで。一度ご覧になった方も、何度でもご視聴いただくことが可能です。
視聴画面・新規参加のお申し込みは下記画像から受講画面にお進みください。