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臨床 2020/06/15

現場目線の嚥下機能評価システム「嚥下チェッカー」で誤嚥予防を日常に

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言語聴覚士の髙橋浩平と申します。言語聴覚士は主に、話す・聞く・食べるなどの問題に対して、様々な医療現場でその評価や訓練を行っています。

 

言語聴覚士の役割

言語聴覚士の需要は年々高まり、その理由として「嚥下障害」の患者の増加が考えられます。

嚥下障害は加齢や脳卒中、がんの治療後等様々な原因で起こる障害です。嚥下障害が引き起こす誤嚥性肺炎の死亡者は2.8%を占めるなど(平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省))、嚥下障害が命に関わる恐ろしい障害であることは言うまでもありません。私たち言語聴覚士は嚥下障害、またそれに伴う誤嚥や誤嚥性肺炎に対して評価や訓練・指導を行うリハビリテーション職の一つです。

 

評価・訓練の具体的な例としては、

 

(評価)

・医師、歯科医師と共覧する嚥下内視鏡検査や造影検査による機能評価

・反復唾液嚥下テストや水飲みテスト、フードテストを用いた機能評価

・食事場面の観察から行う機能評価

 

(訓練)

・食物を用いない嚥下機能維持、向上のための各種トレーニング(間接訓練)

・食物を用いて適切な食事形態や姿勢の調整などを行う摂食指導(直接訓練)

 

などが挙げられ、これらを駆使して病院などを中心に従事しています。

 

 

「嚥下障害」→「誤嚥」→「誤嚥性肺炎」という一連の流れに対して深く関わる言語聴覚士として、強く感じることがあります。それはとにかく「嚥下障害」の段階やその前の段階で具体的な策を講じることが大事だということです。

 

「嚥下障害」にいち早く気付き、適切な評価や対策を指導するのは言語聴覚士をはじめとした専門職です。ただこの言語聴覚士の有資格者数は3万人程度と、決して多くはありません(看護師は約120万人)。また、ただでさえ少ないのにその多くが病院勤務であるため、実際に在宅や施設などの高齢者の嚥下障害に対して予防の段階から関わることは非常に難しいのが現状です。毎年1500人ほど新たな言語聴覚士が誕生していますが、数年でこの状況が好転するとは思えません。

 

このような現状から、今後の誤嚥性肺炎を未然に防ぐためには、言語聴覚士以外の医療職の方や、場合によっては患者さん本人、そしてそのご家族が嚥下障害の予防に関わる必要があると思っています。しかしそれは決して簡単なことではありません。

なんとかこの現状を変えなくてはならない...

 

そこで「嚥下チェッカー」を開発しました

「嚥下チェッカー」は「言語聴覚士のいないすべての場にその知識・ノウハウを」を理念に作成した現場目線の嚥下機能評価システムです。

私が関わる多くの患者さんが、誤嚥性肺炎で苦しんでいます。世の中の誤嚥性肺炎を減らしたい、困っている介護者や現場の医療職を助けたいという一心で、約3年の歳月をかけて完成させました。 

 

「嚥下チェッカー」では、対象者の食事場面を観察しながら質問項目の該当する部分にチェックするだけで、嚥下に関する考えられる原因と対策、トレーニング方法を提示します。 

 

 

①ID、パスワードの取得

「嚥下チェッカー」はすべて無料で、個人、法人どちらでも利用が可能です。

まずは申込フォームから利用者登録し、IDとパスワードを取得します。(※ID・パスワードの発行までには数日いただくことがあります)

 

すでに多くの介護施設にご利用いただいていますが、最近は訪問歯科診療を行っている歯科医師の先生や、臨床での知識を付けるという自己学習目的で、歯科衛生士の方から申し込みいただくことが増えました。患者さんの嚥下評価だけではなく、誤嚥予防の自主訓練を指導する際の参考にしていただいているようです。

 

 

②管理画面からチェック開始

管理画面では、チェックを行った利用者情報の閲覧や再評価をすることができます。

 

 

 

③嚥下評価

食事場面を5つの段階に分け、計17項目の該当部分にチェックいただくことで、嚥下評価を行います。摂食嚥下の知識が少ない方でも分かりやすい内容で、チェックは約3分で完了します。

 

 

「嚥下チェッカー」は実際の食事場面を観察し、タブレットやスマートフォンからチェックしていただく想定で作成しました。

しかしながら、介護の現場では食事の観察や介助をしながら端末を操作することが困難な場合も多くあります。そのため、紙媒体でチェックしていただけるよう、PDFデータも用意しました。一旦紙に記録し、後ほど嚥下チェッカーに入力していただくと良いと思います。

 

 

 

④結果と対策

チェックが終わると、結果画面にて対象者の嚥下に関わる考えられる原因と対策、トレーニング方法が一覧で表示されます。

 

 

結果画面では、大きく2つのソリューションを提示します。

 

 ① 嚥下機能の維持・向上につながる嚥下体操動画を20種類以上あるものからセレクト

 ② チェック項目から考えられる可能性と、解決策を詳細に表示

 

時間がなく、対策やトレーニングを知りたい場合は①、チェックの結果や考えられる問題点と対策を詳しく知りたい場合は②など、状況によって使い分けていただけます。


① 嚥下機能の維持・向上につながる嚥下体操動画を20種類以上あるものからセレクト

 

 ② チェック項目から考えられる可能性と、解決策を詳細に表示

 

 

ここまでが嚥下チェッカーを用いた「嚥下機能の評価」→「考えられる原因を提示」→「トレーニング」という流れになります。

 

その他、法人向けに経口維持加算に必要な計画書例をPDFで出力するなどの様々な便利機能も付けました。今後は摂食機能療法の計画書作成機能も追加予定です。

 

歯科領域での活用

前述したとおり、在宅や施設などの高齢者の嚥下障害に対して予防の段階から言語聴覚士が関わることは非常に難しい現状にあります。

そのため、在宅や施設へ訪問されている歯科の先生方が予防的に関っていく需要は、今後さらに高まることが予想されます。

 

嚥下チェッカーはそのシステムが言語聴覚士の代わりとなり、訪問診療時の嚥下機能評価や訓練指導のサポートに役立ってくれると考えています。

また、口腔機能低下症診断後やミールラウンド時の指導内容考案、さらにはクリニックでの新人や歯科衛生士の教育などにもご活用いただければ幸いです。

 

今後は、言語聴覚士への相談機能や摂食嚥下関連のWebセミナー機能の追加など、当サイトを摂食嚥下全般のサポートツールとしてご利用いただけるように開発を進めてまいります。

 

「嚥下チェッカー」はこちらからご活用ください

 

開発者:高橋浩平(大阪赤十字病院 リハビリテーション科/言語聴覚士)、金銅誠人(西宮敬愛会病院/言語聴覚士)

 

推薦者の声(東京医科歯科大学 戸原玄先生)

東京医科歯科大学の戸原と申します。自分は平素在宅などで嚥下障害の患者さんをよく見ておりますが、慣れている方ならどういった訓練をすればよいかはすぐにわかります。

 

しかし慣れていない先生から実際どういう訓練をしたらよいか教えてほしいというお問い合わせを受けることがよくあります。

 

何かいい方法がないかなと思っておりましたところ、ちょうどこの嚥下チェッカーを目にしまして、まさしくそういった先生にとって使い勝手が高いものと思います。

 

またミールラウンドでの指導や、クリニックの新人の先生や衛生士さんたちの教育などにもご利用価値が高いものと思います。

執筆者

髙橋 浩平の画像です

髙橋 浩平

言語聴覚士

摂食嚥下障害予防普及団体SMA 代表
大阪赤十字病院リハビリテーション科

急性期病院にて摂食嚥下障害に対する評価および訓練に従事しながら、言語聴覚士養成校や看護学校にて非常勤講師として教壇に立つ。日々の臨床業務より在宅や施設など介護領域での誤嚥予防の現状に危機感を抱き、嚥下機能評価サイト「嚥下チェッカー」を作成。「言語聴覚士のいないすべての場にその知識とノウハウを」を理念に同サイトの普及活動を幅広く行っている。

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