この記事のポイント ・カナダのマックマスター大学は、顎関節症の慢性疼痛に有効な介入方法として系統的レビューとメタ分析を行った結果を発表した。 ・顎関節症の慢性疼痛には、複数のアプローチが試みられており、これまでどの組み合わせがより慢性疼痛に適切かを評価するのは困難であった。 ・顎関節症に伴う慢性疼痛の軽減には、対処療法の支援と運動や活動を促す介入が効果的であることが示唆された。 |
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はじめに
カナダのマックマスター大学は12月15日、顎関節症の慢性疼痛に有効な介入方法として系統的レビューとメタ分析を行った結果を発表した。
この研究は、マックマスター大学のLiang Yao氏ら研究グループによるもの。研究成果は、英国医師会が発刊するインパクトファクター93.333の BMJ( British Medical Journal )に掲載された1)。
顎関節症の慢性疼痛に適切な介入方法を検討
顎関節症関連の慢性疼痛には、筋痛性や脱臼、変性疾患、頭痛関連など複数の原因があることが知られている。
その介入方法は、保存的治療や侵襲的治療など、複数のアプローチが試みられており、これまでどの組み合わせがより慢性疼痛に適切かを評価するのは困難であった。
保存的療法は、顎の運動や顎の可動化、認知行動療法(CBT)、自己管理(リラクゼーション戦略など)、投薬(抗炎症薬、鎮痛薬、筋弛緩薬など)、取り外し可能なスプリント、低レベルレーザー治療、および鍼がある。
侵襲的治療は、局所麻酔薬の関節注射やヒアルロン酸などの注射が含まれる。一方不可逆的な治療には、関節手術や補綴術、歯列矯正などが含まれる。
今回研究グループは、顎関節症に伴う慢性疼痛に対する有効な介入方法を検討するため、系統的レビューとメタ分析を行った。
顎関節症に伴う慢性疼痛の軽減には、対処療法の支援と運動や活動を促す介入が効果的
研究グループは、MEDLINEやEMBASE、CINAHL、コクランセントラル、SCOPUSに2023年1月までに登録されていた文献の中から、顎関節症による慢性疼痛(3ヶ月以上)を訴えて受診した成人患者を対象とした論文を選択した。
メタ分析の結果は、GRADEによるエビデンスの確実性と効果推定値で分類した。分析に際しては、プラセボやシャム治療などの対照群と比較した。
その結果、検索で見つかった文献9,033件のうち、フルテキストの論文は1,182件、条件を満たした論文は172本、そのうち153件の研究が含まれた。
被験者数はのべ8,713人で、平均年齢は中央値で35歳、顎関節の疼痛持続期間の平均は中央値で44ヶ月、追跡期間は中央値で12週間であった。また、ベースライン時における疼痛スコアの平均の中央値は、10cm視覚アナログスケールで5.4cmと、重症度においては中程度に相当した。
メタ分析の結果は、以下の通り。緑色の枠に示される8つの介入方法が、対照群に比べ、疼痛に対して有効であると、中等度から高度のエビデンスを示した(図1)。
図1 系統的レビューとメタ分析の結果の一部(画像は出典より引用)
その中で、以下3つの介入方法が鎮痛にもっとも効果的であることが示唆された。
・リラクセーションまたはバイオフィードバック療法により強化された認知行動療法(CBT)
・セラピストによる顎関節可動化療法
・徒手によるトリガーポイント療法
続いて、上記3つよりも効果はやや低かったものの、対照群より有効であった介入方法は以下5つの介入方法であった。
・認知行動療法(CBT)
・監督下での姿勢矯正運動
・監督下での顎関節ストレッチと運動療法
・通常の治療
・監督下での顎関節運動療法とストレッチ、徒手によるトリガーポイント療法
また、対照群に比べ身体機能を改善することを示す中等度の確実性のエビデンスがあったのは、以下4つの介入方法であった。
・監督下での顎関節ストレッチと運動療法
・マニピュレーション
・鍼治療
・監視下での顎関節運動療法と可動化療法
上記以外の介入方法における、疼痛軽減や運動機能の改善に関するエビデンスの確実性は「低い」または「非常に低い」という結果であった。
これらの結果から、顎関節症に伴う慢性疼痛の軽減には、対処療法の支援と、運動や活動を促す介入がもっとも効果的だというエビデンスがあったものの、いくつかの介入方法には信頼性の低いエビデンスしかなかったことが明らかになった。
***
今回の大規模な系統的レビューとメタ解析では、これまで散見されていた顎関節症の介入方法の中で、認知行動療法や顎関節可動化療法、トリガーポイント療法が疼痛軽減に効果があることが示唆された。
一方で、アセトアミノフェンやβ遮断薬 、ステロイド注射などの介入方法については確実性が低いと判断された。
興味のある先生は、詳細を論文でチェックしていただきたい。
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