この記事のポイント ・岡山大学は、口腔の状態が健康である人は、精神的健康状態が良好であることが明らかになったと発表した。 ・これまで口腔の状態と身体的フレイルとの関連は多くの報告があるが、精神的健康状態との関連はあまり報告されていない。 ・この研究から、口腔の状態を健康に保つことで精神的健康状態を良好にできる可能性が示唆された。 |
この記事は、歯科全般>心理学・メンタル
同ジャンルのコンテンツを歯科ジャンルサーチに掲載中↑
はじめに
岡山大学は12月21日、口腔の状態が健康である人は、精神的健康状態が良好であることが明らかになったと発表した1)。
この研究は、岡山大学病院歯科・予防歯科部門の竹内倫子講師と同大学学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の江國大輔教授らの研究グループによるもの。
研究成果は、PLOS ONEに掲載された2)。
精神的健康状態に着目した研究を実施
これまでの研究では、口腔乾燥や無歯顎、咬合力の問題などが、精神的健康状態と関連していることが報告されてきた。
しかし、精神的健康状態に関連している心理社会的要因などを同時に調査した報告はほとんどなかった。
WHOが定めた「世界保健機関憲章」の中で、ウェルビーイングは「健康とは、病気でないとか、弱っていないことではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態のこと」と定義されている。
そこで研究グループは、精神的ウェルビーイングに着目し、研究を行った。
口腔の状態を良好に維持することで、精神的健康状態が良好にできる可能性が示唆された
研究グループは、岡山大学病院予防歯科外来をメインテナンス目的で定期受診する60歳以上の患者を対象に、年齢や性別、全身疾患、歯数、歯周状態、口腔機能、栄養状態、身体機能、心理社会的要因、精神的健康状態の関係について横断調査を実施。これらのデータを元に分析を行い、以下のようなモデルが成り立つことがわかった(図1)。
図1 口腔状態と主観的幸福度の関係をモデル化した構造方程式 (画像はプレスリリースより引用)
その結果、「機能歯数が多いこと」や「舌や唇がよく動く」「舌の力が強い」「咬む力が強い」「咬みくだく能力が高い」「食べ物の飲み込みに問題が無い」ことが、「良好な栄養状態」「広い行動範囲」「孤立がないこと」と関連していることが明らかになった。
加えて、精神的健康状態が良好であることとも関連していた。
このことから、口腔の状態を良好に維持することで、精神的健康状態が良好にできる可能性が示唆された。
***
今回の研究は、横断研究であることから、各要因間の因果関係が立証できていない。そのため、より多くの患者集団を対象としたさらなる研究が必要であると考える。
健康長寿社会を目指す日本においては、口腔の健康と精神的健康状態との関係が見えてきたことで、歯科の介入が精神的な健康寿命を延伸する一助となる可能性もあるだろう。
この記事は、歯科全般>心理学・メンタル
同ジャンルのコンテンツを歯科ジャンルサーチに掲載中↑
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。
記事へのコメント(0)