12月6日の20時、小畑真先生のライブ講演会が行われた。
小畑先生は歯科医師としてのキャリアを積む中で、2000年代に歯科医師による医科・麻酔科研修が社会問題として取り上げられたのを転機に法科大学院へと進学、弁護士資格を取得した。歯科医療を代表して法に関わることができる人材が不足していることに危機感を感じたのがその理由だ。現在ではダブルライセンスを活かして歯科医療のサポートを行っている。
今回はテーマを『歯科医師×弁護士が指南〜最近の歯科医院トラブルに学ぶこれからの歯科経営〜』とし、どの医院でも知っておきたい法知識と経営について解説された。
本レポートでは、講演のサマリーやライブ配信の様子を報告する。
また、12月21日(金)までの期間限定で「振り返り視聴」としてセミナーのオンデマンド配信が行われているため、見逃した方もぜひご活用いただきたい(記事末尾にご案内)。
現代の歯科医療トラブルの背景とは?
小畑先生はまず、前提知識として医療裁判の特徴について触れる。
医療裁判には、専門性・密室性・封建制という3つの壁があることから、紛争をする場合、患者サイドのハードルは非常に高いのだという。それはデータからも裏付けられていることを、最高裁の統計資料を元に解説した。
診療科別にみると、歯科は医科ほど請求額が多くないにも関わらず、案件数としては4番目に位置し、年々増えているそうだ。
それではなぜ、このような変化が起きているのだろうか?
その最大の理由は、インターネットを始めとする情報社会を背景とした、患者権利意識の高まりにあるのだという。
小畑先生は、「昔と今で、基本的なルール自体はほとんど変わっていない。しかし時代が変化しているため、今まで見過ごされてきた問題が顕在化してきている。どちらが良い悪いではなく、社会情勢の変化を認識する必要がある」と強調した。
現代の歯科医院に必須の「契約」という視点
続いてトピックは、今回のメインテーマでもあるトラブル対応と歯科経営への活用に移った。
小畑先生は、法律をスポーツのルールに例える。ルールという言葉は堅苦しい側面もあるものの、ルールがあるからこそスポーツは楽しくなり、勝利への戦略が立てられる。ルールを知り、ルールを味方につけて使いこなすこと。これは現代の歯科経営に必須の視点だという。
小畑先生の法律事務所に寄せられる案件は、対患者が4割(診療契約など)、対従業員が4割(雇用契約など)で、残る2割は不動産との賃貸借契約であったり、業者との業務委託契約であったりするそうだ。
従って、先に述べた社会情勢に対応するためには、現代の歯科医院にとって「契約」という視点は必須であると小畑先生は強調した。
・患者さんとの契約はどのようなものか。気をつけるべき点は?
・患者説明で押さえるべき勘所
・カルテ、同意書、録音・録画について
・労使関係の見直しのポイント
・院長や真面目に働くスタッフを守るための就業規則
などについて「歯科医師 × 弁護士」という立場から分かりやすく指南。
「法律は専門外で難しい」「実際何に気をつければいいの?」といった歯科医師の先生の気持ちに寄り添いながら解説していく。
終盤では、歯科医院は組織・チームであり、より磐石な経営体制として、組織予防の重要性を提言した。
トラブルが発生してからの対症療法では、都度不安定な状況にさらされ、リカバリーも深刻なものになりやすい。予防歯科と同じく、積極的な対策(Positive Defense)こそが現代を生きる歯科医院に必須の視点であると結んだ。
質疑応答と振り返り視聴
本セミナーは生放送で行われているため、全国から多数の質問がリアルタイムで寄せられた。
ウェブ経由で全国から寄せられた質問にその場で回答する小畑先生
・自費治療で契約書や見積書は必要でしょうか。いくらから発行すべきか目安はありますか?
・スタッフのSNS炎上が怖いです。現状禁止はしていませんが、何か対策はありますか。
・パノラマで治療予定でない歯にファイル破折を認めました。告知すべきですか?
・メタルボンドを装着後、気に入らないので治療費を返せと言われました。どうすればいいでしょうか?
・能力の低すぎるスタッフに穏便にやめてもらう方法はありますか?、等7問
振り返り視聴のお知らせ
ライブ配信は終了していますが、当日見逃した方のために振り返り視聴(録画配信)を設けています。これからお申し込みいただいてもセミナーを視聴することが可能です。
※振り返り視聴は2018年12月21日(金)24:00 までの期間限定サービスとなります。