秋田県のほぼ中央部に位置する秋田市。霊峰太平山を擁する出羽山地と日本海に囲まれた、緑豊かな公園都市である。
その秋田市の主要部、秋田新幹線秋田駅から徒歩9分の場所に、市内の老若男女だけでなく、県内各地から患者が集まる歯科医院がある。城東歯科クリニックは、2001年の開業時から地域に密着して、口腔の健康を守り続けている歯科医院だ。
WHITE CROSSでは、クリニックを経営する医療法人社団宝樹会理事長・佐藤弘樹先生に、「歯科医師として成長し続けられる環境」について伺った。
縁もゆかりもない場所での開業
ーー歯科大学卒業後のキャリアについて教えていただけますか?
母が薬剤師で、祖父をはじめ家系に医師や歯科医師など医療従事者が多かったため、学生時代からすでに開業することを考えていました。当時は研修医制度もなかったので、「3〜4年で開業できるレベルにまで育ててくれる」と言われていた歯科医院に新卒で就職しました。
その歯科医院は1日120人くらい患者さんがきて、朝から晩まで休む間もなく診療し、夜は居残り練習。院長が歯科医師会などの役員ですごく忙しい先生だったので、午後は大体同期のドクターと2人で対応しないといけなかったんです。
そんな環境で4年間働いた後、地元秋田に帰りました。そこで何軒かの歯科医院でアルバイトをして、卒後5年目の2001年11月に1医院目のふただ歯科クリニックをオープンしました。
医療法人社団宝樹会 理事長 佐藤弘樹先生
ーー開業時のエピソードを教えてください
開業地に選んだ潟上市は、縁もゆかりもないところでした。ゼロからのスタートだったので、一番初めは歯科医院から半径1キロ圏内にあるお宅に、名刺とタオルを持って訪問していったんです。
当時は28歳と若かったこともあり、住民の方には「新手の訪問商法か?」なんて怪しまれながらも地道に一軒一軒回りました。そのおかげか、開業初日には24名の患者さんが来てくれました。
師匠の守口先生が日本訪問歯科協会の理事長だったこともあり、そのノウハウを受け継いで訪問歯科も始めました。開業当時は僕と歯科助手、受付しかいなかったので、外来の診療終わりや休診日を利用して訪問診療に出かけていました。大変でしたが、かなりいい経験になりました。
地域に受け入れられる歯科医院になるには
ーー先生の診療理念を教えてください
開業前から、「地域密着型」というスローガンを掲げています。家宅訪問や休診日の訪問診療が功を奏し、地域のスキマにどんどん入っていくことができる歯科医院になっているのではと思います。
その後分院展開をした歯科医院でも、訪問歯科をやっている3軒は同じように家宅訪問をして、患者さんを増やしていきました。地域によって土地柄も住民の性格も全然違うので、その地域にあった歯科医療を提供するようにしています。
また、師匠が志高い人で、「いい生活をしたかったら、自分で勉強するしかない」と言われていました。それもあって開業1年目から常に勉強する姿勢を続けており、土日はセミナーなどに参加するため、1日も休んだことがないです。
SJCD、5D、赤坂塾…道場破りではないですけど、主要な勉強会にはほぼ行きました。今ではどこはなにがいい、と評論家みたいなことも言えるくらい、ありとあらゆるセミナーに行き、院内のシステムに反映していきました。
セミナー講師直伝の診療環境
ーーどのような環境で診療しているのでしょうか。
「ゆりかごから墓場まで」といいますか、患者層のバランスはとてもいいです。小児から訪問診療もやりますし、グループ内には矯正専門のクリニックもあるので、さまざまな分野を網羅したいという先生にはぴったりだと思います。
また、僕自身がインプラント分野で講演させていただく機会が多いので、インプラント症例が年間600本を超えている。それもあって、他院で診られないような症例を経験できる機会も多いです。
最近ではヨシダさんの新しい口腔内スキャナー「コエックスi500」の講師も担当しています。日頃セミナーで話していることを、日々の診療で直接学んで実践できる環境というのも、宝樹会の特徴の一つです。
佐藤先生が講師を務めるプログラムの研修風景
ーー院内研修について教えてください
月に一度、僕が理事を務めるMID-Gの教育プログラム「GPアカデミー」に則って、講義と実習を行っています。
また、分院長を務める先生には、院長になる一年前から法人負担でSJCDのレギュラーコースに参加してもらっています。宝樹会の歯科医師として同じ方向を向いて診療に携わってほしい、という思いがあるので、僕がSJCDで学んだ中で大切にしている「包括的な診療」という考え方ができるようになってもらいたいんです。
特に、法人に残ってくれる先生のことは大事にしたいと考えています。希望する先生には僕が理事を務めるスタディグループ BBDA主催のベトナムインプラントコースに行ってもらうなど、先生の学びたいという意欲をできる限りサポートしています。
スタッフは宝。歯科医師をサポートする組織作り
ーーチームの文化を教えてください
歯科医院は、そうはいっても女性の職場。ドクター主導でどこまでもやっていけるかというと、そういうわけにはいかないんです。
うちのグループの自慢は、女性スタッフのレベルがすごく高いこと。歯科衛生士や歯科助手、受付の役割をきちんと決め、それぞれのスタッフが責任を持って業務に当たれるようにしています。
長く勤めている人も多いですし、クリニックに来るメーカーさんも「この教育レベルの高さは、他にはない!」と驚いて帰られます。そのため、診療中にはドクターとスタッフで頻繁にディスカッションしている場面をよく見ます。
理念に向かって行動できるスタッフが多く、ドクターが迷っている時には、「理事長だったらこういう風に考えると思いますよ」と伝えてくれているので、若手の先生が成長できる環境が整っています。
治療中にもさまざまなディスカッションが行われる
ーー先生が考える、一緒に働きたい歯科医師とは?
真面目に治療してくれる人がいいです。あとは、全体の輪を一番に考えてくれる人。人のことを思いやってくれる人。
知識と技術は毎日診療しているとかならず身につくので、歯科医師としてのモラルのある行動ができる人と一緒に働きたいですね。
AIやバーチャルが発達し、歯科医療の技術がどんどん変化していく中で、私たち歯科医師もいろいろな場所で新しいことを勉強していかなければいけません。
これからの時代の先生たちは、目まぐるしい環境の変化から逃げることをせずに、自分からどんどんドアを破っていき、立ち向かってほしいなと思います。僕ら世代が切り開いてきた歯科業界をさらに切り開けるような、ハングリー精神のある次世代の先生たちと一緒に歯科医療がしたいです。
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