microsurgeryを可能にするマイクロスコープの歴史は、1953年にドイツのカールツァイス社が耳鼻咽喉科手術向けに開発したものにはじまる。微細術野を明るい視野で拡大でき、楽な姿勢を維持しながら手術を行えるこの画期的な医療機器は、その後、徐々に医療界に普及していく。
1960年代には眼科と脳神経外科、1980年代には形成外科・整形外科・婦人科に、そして1990年代になり歯科医療におけるマイクロスコープの歴史がはじまった。歯内療法からはじまったその活用だが、微細な小外科手術を連続して行う歯科治療との親和性は高く、日本においては、歯周療法・保存療法・補綴治療・外科治療・インプラント治療などへとその対象を拡大し、まさに和魂洋才にて世界でも類を見ない発展を遂げている。
著者の佐藤琢也先生は、日本のmicrosurgeryを牽引している歯科医師の一人である。UCLAにて、インプラントや骨再生治療の分野で世界的に著名な Dr. サーシャ・ジョバノビックに師事し、帰国後は大阪にて開業。スタディーグループ「Club GP」の代表として後進の育成に尽力しながら、米国・中国・オーストラリア・シンガポールなど世界各地に技術指導や講演のために招待されている。
クリニック併設のセミナールームにはマイクロスコープが常設されており、Microsurgeryを基礎から学ぼうとする歯科医師が日々トレーニングに励んでいる
本書には、佐藤先生がそのキャリアを通じて突き詰めてきたmicrosurgeryを、後進に教え続けてきたからこそ結晶化された情報が余すところなく記されている。
医の倫理とmicrosurgeryのつながりを示す序章にはじまり、1章「マイクロスコープと拡大鏡の応用」においては、マイクロスコープがどのような有用性を示すか、その導入における考え方やアシスタントの育て方などが示されている。
「私だからできるのであって,あなたはできない」といった類の名人芸で, マイクロスコープが"凝り屋の嗜好品"として扱われてしまっては非常に困る. ひとまず要領を得ることができれば, 誰もが使いこなせるのがマイクロスコープで, 誰もが習得できるのがmicrosurgeryであってほしい.
という一文に、本書の本質を知る。
microsurgeryに必要な知識や手技が、基礎から丁寧に示されている
2章以降はその本質にそった学びの連続となる。解剖学・使用機材・手術手技などについて基礎から紐解いた上で、それらをmicrosurgeryという施術法に当てはめることで、どのような治療が可能となり、どのようなアウトカムにつながるのか、多くの図・イラスト・写真などとともに示されている。
ところどころに差し込まれているコラムでは、歯科医療を基軸に人生を楽しむ佐藤先生の明るいキャラクターが垣間見えて面白い。
豊富な症例からmicrosurgeryがArt & Science を体現するための素晴らしい施術法であることを知る
切開、縫合、歯周外科の目的と分類、歯周病ポケットの減少に向けて、インプラント治療、歯肉退縮に対するアプローチ、狭小化する歯槽堤と歯間乳頭への対応、そして、補綴治療への関わり・・・マイクロスコープの導入を検討している歯科医師にとっては、それがもたらす価値と身につけるべき手術手技を知るための入門書となり、すでに用いている歯科医師にとっては、より高めていくための実用書となる。
山﨑長郎先生は本書を、
「温故知新」を体現し、"歯周外科の新しい門" を開いたという言葉が非常にしっくりくる良書である
と評した。
microsurgeryを習得し、歯科治療の患者価値を追求したいすべての歯科医師にオススメの一冊である。
『新時代の歯周外科ー切開と縫合の基本から拡大視野下の手術手技ー』詳細はこちら
『JAPANブランドとして 〜挑戦しつづける歯科医療人生の先に〜
WHITE CROSS インタビュー
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