歯科臨床に科学的根拠が求められるようになって久しい。
ドクターの卓越した技術や経験に、文献に基づいた意思決定が重なることにより、近年の歯科医療はさらなる発展を迎えている。
一方で、歯科医院は事業体であり、歯科医療の継続的な提供のために、ヒト・モノ・カネの管理が適切に求められることは言うまでもない。
経営的な意思決定は、実は臨床上の意思決定と同等かそれ以上に日々行われており、治療自体に大きな影響を及ぼす内容も多いと考えられる。
そこにおいて、ドクターでありながら、経営者でもある歯科医師は、歯科診療と同様、根拠に基づいた意思決定を行えていると言えるだろうか。
今回、医業経営コンサルタント協会という、厚生労働省の認可を受けた公益社団法人の歯科経営専門分科会が編著を行った書籍が刊行されたので、ご紹介したい。
『386歯科医院の統計データから見える 成功医院のセオリー』と題し、歯科医院経営を統計的に分析。臨床と経営で忙しいドクターの問いに統計学で答える画期的な内容だ。
ヒト・モノ・システムに大別し、多くのドクターが疑問に思うであろう26の問いに対し、医業経営コンサルタントがデータを用いて明確な回答をしている。
例えば、
・CT・マイクロ・CAM/CAMと医業収益の関係は?
・勤務医・歯科衛生士・歯科助手の最適な配置は?
・矯正の症例数と医業利益の関係は?
・インプラントの埋入本数と医業利益の関係は?
・カウンセリングルームの有無が自費率や人件費に与える影響は?
・診療時間と患者数の関係は?
・チェアタイムと医業収益の関係は?
などだ。
巻頭には、データを読む上で最低限必要になる統計学用語のひと言解説があるため、数字が苦手な読者でも入りやすい。
ファクト(事実)は分かったが、どう解釈・実行すればいい?
というのが次なる疑問だが、各問いごとに、「経営ワンポイント」というコーナーが設けられ、読んだその日から自院に落とし込める内容になっている。
巻末には、「感染拡大時代にも支持される歯科医院」と題して、執筆に関わった医業経営コンサルタントによる座談会がまとめられている。
平時から複数の歯科医院に入り込み、寄り添っている認定コンサルタントだからこそ語ることができる、金言が散りばめられた本書。
ぜひお手に取っていただき、エビデンスベースドデンティストリーならぬ、エビデンスベースドマネジメントの一歩を踏み出していただければと思う。