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Book 2022/03/02

チーム医療のためのおすすめ書籍 第3回『歯科医院でもできる!口臭ケア〜口臭専門医が教えるお口のにおいの対応法〜』

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マスク生活が習慣化し、ご自身の口の臭いが気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

以前から、口臭は口の悩みの上位に位置していましたが、マスクを長時間装着していると、今まで気にしていなかった口からの臭いに敏感になる患者さんが増えているように感じます。

我々歯科医院は口臭に悩む患者さんに対して、専門家としての診断、治療、そして正しい知識の提供を行うことが望ましいです。歯周病やカリエスなど、口臭の原因が口腔内にあれば、治療後に消失するでしょう。一方、それ以外の口臭に悩む方もいらっしゃいます。そのような患者さんの対応に悩んでいた筆者は、改めて口臭についての基礎知識を当書で学びました。

本日は、同じような経験で悩まれている方に、愛知学院大学歯学部附属病院特殊診療科教授 福田光男先生監修の『歯科医院でもできる!口臭ケア』をご紹介します。


『歯科医院でもできる!口臭ケア』詳細はこちら

 

口臭の分類を知り対応法を学ぶ

「口臭」とは、口を開いたときに呼気から感知される不快な臭いのことを差します。口臭の分類は「生理的口臭」と「病的口臭」に分かれており、まずはそこから理解する必要があると述べられています。

歯科、口腔領域の疾患に起因する口臭の中には、以下などが挙げられています。

・口腔清掃不良
・歯周炎
・多数歯にわたるう蝕
・口腔粘膜の炎症
・舌苔
・清掃不良の義歯
・適合していない修復物

 

口臭の原因となる、適合していない修復物(提供:クインテッセンス出版)


これらについては、見つけること、治療することは一般歯科では日常で行われていることであり、それほど困難ではないでしょう。次に、耳鼻咽喉科疾患に起因する口臭として、下記が列挙されています。


・鼻炎、副鼻腔炎にともなう後鼻漏
・口蓋扁桃周囲の炎症疾患
・咽頭疾患
・鼻咽腔、口腔、顎顔面領域の悪性腫瘍

 

口臭の原因となる、口蓋扁桃周囲の炎症性疾患(提供:クインテッセンス出版)

 

こちらで挙げられている項目は、歯科で治療は難しくとも、写真の症例を参考に症状を見つけることは可能であると感じました。メインテナンスなどで口臭に悩む患者さんが来院されたら、咽頭や扁桃周囲も併せて診ることを意識してみましょう

 

明日から実践できる、「口臭症」の患者対応

当書を読むにあたり「口臭」についてリサーチしたところ、ある掲示板にたどり着きました。口臭で悩む人たちが集う掲示板に、ある歯科医師が親身になって答えているサイトです。

 

そこで悩み相談をされている方たちは比較的若年層が多く、社会生活に支障をきたしているという悩みや、歯科医院や耳鼻科に行ってもなかなか改善されず、途方に暮れているといった声が寄せられていました。こんなにも多くの方が口臭に切実に悩んでいるのかと驚きました。

 

口臭(第三者や機器が完治可能な不快な臭気)の存在のあるなしにかかわらず、口の臭いを気にし悩む病態をまとめて『口臭症』と呼んでいます。

 

(当書P23より引用)

 

歯科口腔領域が関わる症状である限り、口臭に悩む患者さんに対して専門外だという対応はできません。しかし、一般歯科医院で口臭に対してできることには限度もあります。当書の中では、一般歯科にもできることが解説されてあり、その中に官能検査があります。

 

官能検査は特別に装置などを準備する必要がなく、マスクを外して近距離で会話をして臭いがあるかを調べる検査です。術者により個人差があると思われますが、基本的に市販で売られている口臭検査よりも、総合的には人間の嗅覚の方が臭いセンサーとして機能が優れているので、専門家としては官能検査を優先することが述べられています。

 

官能検査の判定基準表(提供:クインテッセンス出版)


他にも舌を見るときのポイントや、喉の奥を見るときのポイントなど写真付きで解説されているので、わかりやすく学べます。

 

口臭専門外来ではどうしているか

では実際に一般歯科から専門外来に依頼した場合、口臭専門外来ではどのように口臭治療を進められているのか。当書では、医療面接で行っている内容からさまざまな検査方法、対応方法まで詳しく解説されています。

 

特に印象に残ったのが、「小児、未成年者への口臭への対応」です。小児や思春期はその時期特有の口臭があることは周知の事実ですが、この時期に友人から「臭い」と言われ、深く傷つきトラウマになってしまうケースも少なくありません。
 
そのようなことでトラウマになり大事な思春期に、長期間口臭症に悩むことのないよう、我々も専門的な立場から、心理的なアプローチとコミュニケーションを持って対応すれば、早期に口臭症患者を救えるのではと著者は伝えたかったのではないでしょうか。

 

最後に

皆さんの身近な人の口から悪臭を感じたとしたら、歯科医療者としてどのくらいの方が、本人に指摘できるでしょうか。たとえ専門職に従事していたとしても、夫婦間や親子でさえ、口臭を指摘することは勇気のいることと感じます。

 

それほど口臭とはナイーブな疾患であり、時に社会生活に支障をきたすほど悩んでいる患者さんがいるということを、私たちは知らないといけないと当書で学びました。
 
スタッフ全員で当書から口臭に対しての基礎知識を学び、一般歯科医院でもできることを取り入れることで、医院の強みを一つ増やすことができるのではないかと思います。

当書から、一人でも多くの口臭症で悩む患者さんが救われることを願っています。


『歯科医院でもできる!口臭ケア』詳細はこちら

 

出典

歯科医院でもできる! 口臭ケア(2021年発行)

 

チーム医療のためのおすすめ書籍

第1回『GPとDHのためのぺリオドントロジー』

第2回『「舌が痛い!」という患者さんが歯科医院に来院した時に読む本』
第3回『歯科医院でもできる!口臭ケア〜口臭専門医が教えるお口のにおいの対応法〜』

 

執筆者

長内 香織の画像です

長内 香織

歯科衛生士

医療法人社団 麻布東京デンタルクリニック 歯科衛生士長

鹿児島歯科医師会立歯科学院専門学校卒業後、数々の一般歯科で勤務。2013年に麻布東京デンタルクリニックの歯科衛生士長として従事し、脇智典院長をはじめチーム医療の先生方と出会い、医療人としての在り方を学ぶ。臨床のかたわら、予防歯科を目指す歯科衛生士のスタッフ教育、一般への啓発活動も行っている。

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