英国ガン研究所(Cancer Research UK)は、ガン研究とガンに関する啓発事業を行っている公益財団であり、研究機関や大学、病院などと連携している。
2016年11月に、同研究所が発表したデータによると、過去20年で英国における口腔ガンの罹患数は68%増加しており、100,000人あたり約8名から約13名へと増加している。口腔ガンは男性に多い疾病であったが、この20年間では性別差なく増加が見られたという。50歳以下の女性においては、実に約71%もの増加が見られたという。
口腔ガンの10件に9件は生活習慣やその他のリスクファクターに起因するものが多く、喫煙を代表に、飲酒、野菜・果物が不足した食生活、そしてヒトパピローマウイルスの感染などがその原因とされている。
実は、日本においても口腔ガンは増加傾向に有る。国立研究開発法人国立がん研究センターのデータによると、1992年と2012年の20年間で口腔・咽頭ガンの罹患率は100,000人あたり3.5名から6.5名へと、85%も増加している。
口腔ガンは、他のガンとは異なり患部を直接見ることができるため早期発見しやすいと言える。また、初期段階で治療をすれば5年後の生存率は97%以上というデータもあり、歯科医院における早期発見が重要である。しかしながら一般開業医において、粘膜疾患、特にガンなどに対する明確な診査・診断が下せるかというと知識・経験的に難しいのもまた事実である。
一般開業における、口腔ガンや粘膜疾患のスクリーニングで近年、世界中で広まってきているのがベルスコープである。ベルスコープは口腔粘膜に対して特殊な波長の光を照射することで、口腔内粘膜に異形成の疑いがあるかどうか観察する医療機器であり、既に世界23カ国で13,000名以上の医師が使用しており、2,500万件以上の実績を有しているという。
出典: YouTube_Velscope VX Oral Cancer Screening Exam
患者の口腔に対して、ガンタイプの医療機器から光を照射し、得られた画像において異形成部位を見つける。無論、画像から情報を読み取れるようになるためのトレーニングが必要だが、補助的な医療機器として心強いものである。
テクノロジーの進歩により、診査・診断や医療行為に変化が生じるものは他にもある。口腔ガンとは無関係であるが、医科において採血の際などに血管の走行などを浮かび上がらせる医療機器 Accu Vein は衝撃的である。
新しい治療技術が生まれてから一般に浸透するには20年という時間がかかると言われているが、近年のテクノロジーが加速させる補助的な医療機器については比較的浸透が早いと言われている。
様々な医療機器が生まれては消えていく中で、真に患者価値の高いものが浸透して残ってくことを願う。