1月21日、WHITE CROSSにて「Tokyo Perio Implant Symposium2021」が開幕した。
シンポジウムのモデレーターを務めるのは、世界で活躍する日本人ペリオドンティストのMin Seiko先生。スピーカーとして集うのは、国内外の専門医。
日本の卓越した臨床技術力と米国のEBMを掛け合わせ、新しい学びの場を創出するのが本シンポジウムの目的と語るMin先生。
初回のテーマに選ばれたのは、歯科医師にとって永遠のテーマともいえる、保存と抜歯の基準。オンラインでの未だかつてない試みに注目が集まる。
本記事では、第1回の天然歯セッションの様子をレポートしたい。
冒頭挨拶で、シンポジウムに懸ける思いと見どころを語るMin Seiko先生
保存・抜歯 原則をアップデートせよ! 天然歯セッション
『エビデンスに見る天然歯保存の基準』蓮池聡先生
トップバッターを務めるのは、学生時代からEBMを学び、現在複数の学会の診療ガイドラインの策定にも携わる、日本大学歯周病学講座の蓮池聡先生。
歯の喪失の主な原因を、歯周病・う蝕(修復、歯内療法)・破折の3つに大別した上で、歯の予後判定に関するシステマティックレビューを紹介した。
古典的な文献から、2021年にアップデートすべき最新の論文にいたるまで、臨床家として押さえておきたいエビデンスとその臨床的な解釈がコンパクトに解説されており、明日からの診査診断に大いに役立つ講義となった。
『歯の保存・抜歯を見極める!』前川祥吾先生
前川祥吾先生は、国内にて専門医を取得後、ハーバード大学の客員研究員として主に再生療法の研究に従事している新進気鋭の歯周病専門医だ。今回は「残根状態の歯の保存」にフォーカスしての講演となった。残根歯の保存治療においては、前川先生の得意とする歯周外科手術のうち、切除療法の応用が有効な治療法。
歯冠長延長術(クラウンレングスニング)の基礎と臨床において、歯周組織のフェノタイプ、適応症と禁忌症、術式、配慮すべき補綴的要件などの押さえておくべきポイントについて、症例を供覧しながら明快に解説した。
さらに、最新のTIPSとして、デジタルデンティストリーを応用した歯冠長延長術についても紹介された。
『日本の歯周病専門医が実践するSave the teeth』星嵩先生
星嵩先生は、大学博士課程、スタディーグループで歯周病学を学ぶという、国内における王道キャリアを歩み、現在は歯周病専門医として新潟県魚沼市で開業している。今回は「日本の歯周病専門医が実践するSave the teeth」と題し、グローバルな保存治療に挑戦する若きスピーカーだ。
講演では、世界基準の歯周組織再生療法について文献や症例を提示しながら解説。マテリアルと術式の選択がディスカッションポイントとなりやすい同治療において、2021年現在での最新の知見を述べられた。
講演の最後では、Hopeless teethの保存を行った症例を多数供覧。なぜその歯を保存することに患者利益があるのか、診断から術式選択まで極めてロジカルに展開されており、明日からの臨床の指針となる内容だ。
『事実などない,あるのは解釈だけである。』先田寛志先生
先田寛志先生は「救歯臨床」と呼ばれる、他院で抜歯と診断された歯の保存に情熱を捧げる大阪の歯科医師。そのストイックだが親しみのある人柄に、歯科界でもファンの多いドクターの一人だ。講演では、MTM(Minor Tooth Movement)、MTAセメント、BTAテクニック、RET(Rotative Extrusion Technique)という4つのテクニックやマテリアルを用いた臨床を紹介。歯の保存は大前提とした上で、いかに審美的かつ機能的に保存するかというのが一貫したテーマだ。
くれなゐ塾の内藤正裕先生をメンターと仰ぐ先田先生は、“患者さんの人としての尊厳や誇りを取り戻す”手助けをすることを旨に、日々の臨床に当たっているのだと締めくくった。
ディスカッションの様子。日米5拠点を中継してのリアルタイムな議論が繰り広げられた
すべての講演が終わった後は、モデレーターのMin先生のもと、セッションテーマに対し、十分な時間をとってさらなる深堀りが行われた。受講生から寄せられた多数の質問にも答えながら、明日からの臨床に持ち帰ることができるようなメッセージが紡がれていく。
録画視聴と次回の予告
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。