義歯の安定とは、義歯の動きを抑えることだといえます。
2023年3月28日、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 口腔顎顔面補綴学分野准教授 西恭宏先生に、義歯の動きを抑えるという視点から、義歯安定剤の使い方についてご講演いただきました。
同講演のポイントを紹介します。
「機能時」「経時的」に大別される義歯の動き
西先生は義歯の動きについて、義歯の動揺・変位といった「機能時の動き」と、顎堤吸収などによって生じる「経時的な動き」に大別されるとお話しされました。
義歯安定剤とかかわるのが機能時の動きであり、義歯そのものの状態(設計)に関係するものと、患者の状態に関係するものに分けられます。
・咬合様式
咬合様式が重要なのは、咀嚼・咬合の際に人工歯が接する寸前であり、総義歯であれば両側性平衡咬合を取るべきであるといわれています。
・人工歯排列位置
人工歯排列位置が重要になるのは食品を噛もうとするときであり、その際に力のバランスが問題となります。そのような点を踏まえ、非作業側で義歯が外れないよう、片側性咬合平衡を保つことを義歯の要件として挙げられています。
・義歯床・フレンジ形態
義歯が外れたり、動いたりするのを防ぐためには、人工歯の頬舌的排列位置に加え、頬圧も寄与するといいます。片側で噛んだ際、フレンジを厚くすることで頬から圧力がかかり、外れにくくなります。また、義歯床の長さも重要であり、上顎義歯が離脱する時は長さを確認するのが望ましいとお話しされました。
下顎義歯の維持には筋圧維持と辺縁封鎖がかかわることも西先生は説明されています。
臨床上、封鎖されない原因となりやすいのがレトロモラーパッド部であることから、そこに適した形を作る手段として、閉口印象でのサクションデンチャー製作を挙げられています。
また、前歯部舌側の封鎖を維持するための対処として、舌の後退位に対し、舌側の義歯床の辺縁を少し広げて伸ばすことや、舌前方位への賦活化を挙げられました。
・粘膜面の適合
粘膜面の適合とは何かという点に対し、義歯粘膜面と顎堤粘膜のスペースを減らすという考え方を西先生は紹介されました。さらに、義歯安定剤を薄く塗る方が接着力は大きくなるという文献を取り上げ、薄く塗ることで顎堤と義歯の間のスペースが小さくなると説明されました。
・唾液量
唾液量は口腔乾燥とかかわってきます。これを踏まえ、口腔乾燥の人に義歯安定剤を使うことで、咀嚼能力、維持力が有意に上がるという研究結果について解説されました。
ほかに西先生は、義歯安定剤を使うことで、硬く粘着性のある食品でも義歯の動きを小さくし、咀嚼時間の短縮にも寄与するという研究結果も紹介されました。
患者さんの状態に応じパウダータイプの検討も
粘着型の義歯安定剤の代表例として、クリームタイプとパウダータイプが挙げられます。
シェアとして多いのはクリームタイプですが、義歯安定剤の使用頻度が多い方では、塗りやすさからパウダータイプを選ばれる方もいらっしゃるそうです*。
*ポリグリップの使用方法は一日一回です。使用に関しては製品の説明文書をよくお読みください。
義歯の動きを抑えるための義歯安定剤の使い方や、パウダータイプの義歯安定剤の活用について、今回ご紹介した内容を義歯診療にお役立ていただけますと幸いです。
クリームタイプの義歯安定剤 新ポリグリップ
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