近年、象牙質の露出を伴わない新しい知覚過敏が注目されています。
2022年12月14日に開催されたシュミテクトWeb講演会では、大阪歯科大学歯学部准教授 吉川一志先生に、「知覚過敏治療の精度を高める準備としてのファーストステップ」と題してご講演いただきました。
新しい知覚過敏の特徴や、従来型も含めた知覚過敏における治療のファーストステップの重要性についてお話しいただきましたのでご紹介いたします。
象牙質知覚過敏症の原因・処置法
知覚過敏の原因として象牙質の露出が挙げられます。歯周病や不適切な歯磨き、過度の咬合力などにより象牙質が露出すると、象牙細管が開口し、刺激を受け続けることによって象牙質知覚過敏症が発症するといわれています。象牙質知覚過敏症の治療は症状の程度に応じて行われ、進行に伴い治療の侵襲性も大きくなります。
「形成と修復による方法」や「抜髄」は患者さんの負担が特に大きいことから、その前の初期治療がとても重要です(図1)。
図1
Wind-up現象
Wind-up現象とは「末梢組織が繰り返し刺激されると、その刺激によって興奮性が急速に増大し、長く持続する」という現象です。機械的・化学的侵害刺激、熱刺激であっても反復して加われば慢性的にWind-up現象が起こります1)。
歯髄神経も同様で、最初は軽い刺激であっても放置することで歯髄神経にWind-up現象が発生して興奮状態に陥り、最終的に慢性疼痛に移行する可能性があります。
慢性疼痛を予防するためには、知覚過敏のような最初は軽い症状であっても痛みを早期に遮断することが重要となります(図2)。
1)半場道子. 痛みの神経生理学. 歯科薬物療法. 1999, vol.18, no.3, 156-164.
図2
新しい知覚過敏の原因と特徴
最近では、象牙質の露出が見られない知覚過敏も認められています。原因としては食いしばりや歯ぎしりによる歯のひび割れ、歯髄の虚血再灌流障害が挙げられます。
・食いしばりなどによる歯のひび割れ
食いしばりや歯ぎしりによりエナメル質にクラックが生じると、クラックを伝って外部刺激が歯髄まで到達して炎症を起こすと考えられています。
・歯髄の虚血再灌流障害
食いしばりなどの過度な咬合により歯髄内圧が更新し、歯髄充血が起こり単純性歯髄炎の状態となり、知覚過敏症状が惹起されます。
咬合が関与している場合には多数歯に及ぶこともあり、口の中全体に症状を訴える患者さんやどの歯がしみるのかわからないと訴える患者さんもいます。また、過度な咬合の原因となり得るストレスを排除することは難しいため、再発が多いことも特徴の一つに挙げられます。
このような多数歯知覚過敏に対する処置方針としても、症状に応じた処置が検討されることから「再石灰化の促進」や「痛みの伝達経路の鈍麻・ブロック」といった初期治療が求められます。
知覚過敏治療のファーストステップ
上述の通り、知覚過敏は、従来のような象牙質が露出している場合も象牙質の露出が認められない多数歯知覚過敏の場合も、初期治療がとても重要とされています。
特に多数歯知覚過敏の場合は歯全体に治療薬を塗布することは難しく、治療のファーストステップとして、歯磨きによるケアが望まれます。
知覚過敏用歯磨剤の使用
シュミテクトは知覚過敏に特化した処方となっています。
配合成分である硝酸カリウムは安全性と知覚過敏に対する効果がFDAで認められています。カリウムイオンは歯の神経まで浸透することが可能であり、歯髄神経細胞の興奮を軽減することが期待されます。
また、フッ素は、プラークを除去した後、口腔内に流出したリン酸イオン、カルシウムイオンの再石灰化を促進する効果が期待されます。知覚過敏の治療は繰り返すことにより徐々に効果が得られるため、継続して行うことが重要です。
適切なブラッシング指導も含めた歯科医師、歯科衛生士による継続的な口腔ケアにより、侵襲性の大きい治療を行うことなく知覚過敏による痛みを軽減させていくこと、歯磨きにより口腔内を清潔に保つことの重要性を患者さんにきちんと説明いただくことが知覚過敏治療のファーストステップであると考えています。
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