最近の歯科界におきましては、象牙質の露出を伴わない新しい知覚過敏が注目されています。
2021年11月17日に開催されたシュミテクトWeb講演会では、大阪歯科大学歯学部 准教授 吉川一志先生に、「知覚過敏治療のファーストステップ-次の知覚過敏治療の精度を高めるための準備-」と題してご講演いただきました。
従来の知覚過敏との違いや対処法、治療のファーストステップの重要性についてお話しいただきましたのでご紹介いたします。
象牙質知覚過敏症の原因
象牙質知覚過敏症の原因には、象牙質の露出と象牙細管の開口があげられます。
歯周病や不適切な歯磨きによる炎症の結果、歯肉が退縮して象牙質の露出が起こります。ストレスによる歯ぎしりや食いしばりから、歯の結晶構造の破壊とくさび状欠損が生じ、象牙質の露出へつながる例もあります。
正常な状態では、唾液中のカルシウムイオン・リン酸イオンによって生じた結晶成分によって象牙細管はふさがれていますが、口腔衛生状態が良くない場合はプラークから生じた酸が結晶成分を溶かし、象牙細管が開口して外部からの刺激を歯髄に伝えてしまいます。
象牙質知覚過敏症の処置法
知覚過敏が発症してしまった場合、症状の程度に応じた処置を検討します(図1)。
図1 象牙質知覚過敏症の処置法
①初期治療による再石灰化の促進
初期治療では、適切なプラークコントロール、ブラッシング指導を行います。プラークを除去して酸の発生を抑制し、唾液中のカルシウムイオン・リン酸イオンによる再石灰化を促進します。
②象牙細管開口部の積極的な閉鎖
次に、薬剤の塗布により象牙細管開口部の積極的な閉鎖を行います。使用される薬剤はフッ素をはじめ、シュウ酸鉄やグルタルアルデヒドなど様々なものが使われます。
③の場合は麻酔が必要となる可能性が高く、④についても利点がほとんどないため、できれば避けたい処置方法です。
新しい知覚過敏の特徴と原因
最近では象牙質が露出していないにもかかわらず、知覚過敏を訴える症例があります。この新しい知覚過敏は象牙質が露出していないことに加えて、口の中全体がしみている気がする、どの歯がしみているのかわからない(多数歯知覚過敏)という訴えが多いことも特徴です。
原因として、食いしばりや歯ぎしりによってできる歯のひび割れが考えられます。さらに酸蝕症により、ひび割れが助長されている場合もあります。
ひび割れがない状態でも、歯髄に虚血再灌流障害が生じている場合があります。食いしばりや歯ぎしりによって歯髄内圧が亢進し、歯髄充血が起こり単純性歯髄炎の状態となり、知覚過敏症状が惹起されるという機序です(図2)。
図2 ストレスが歯髄に影響を与えている知覚過敏
多数歯知覚過敏は治療のファーストステップが重要
このような多数歯知覚過敏の場合、従来の治療法ではすべての歯に薬剤を塗布することや、処置を行うことは難しいといえます。処置により一時的に症状を抑えても、原因(ストレス)の除去が難しいため再発する可能性も高いと考えられます。
そのため、多数歯知覚過敏症の処置方針は、侵襲性の大きい方法ではなく、初期治療による再石灰化の促進などのファーストステップが重要になってきます。
知覚過敏用歯磨剤の使用
硝酸カリウムを含み知覚過敏に特化した歯磨剤の使用は特にお勧めします。硝酸カリウム含有歯磨剤の効果は、4週目には81%に自覚症状の改善が認められたという報告1)があります。
1)Nagata T, Ueda M, Imai H, et al, Japan Soc Periodontol 1992; 34(2): 465-471.
歯磨剤の使用は、プラークを除去し、フッ化物を含有している場合はフッ素による再石灰化の促進効果が期待できます。このような治療のファーストステップにより、症状の軽減と発症部位の範囲を縮小していくことが重要です。
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