2月17日(土)〜18日(日)にかけて、東京都港区の笹川記念会館において、”地域を超え、スタディーグループを超え、トップランナーの先生方が、これからの歯科界へ贈るメッセージ” として、Innovative Collaboration for Future が開催される。
当シンポジウムは、東京のA.S.C.、名古屋のYOSG、そして京都のS.D.R.という若手の歯科医師を中心としたスタディーグループ3団体のコラボレート企画として開催される。
主宰の 中村航也先生よりメッセージ
日本の歯科医療を盛り上げていくためには、年齢やスタディーグループ、地域を超えて歯科医師同士がつながり高め合っていける機会が必要です。
そのためにはこれからの歯科医療を担う若手歯科医師から積極的にそういう学びの機会を作り上げていくこと、そして今まさに歯科医療界を牽引している様々な分野のトップランナーの先生方からの力添え・御指南が必要です。その第1歩として、当シンポジウムを開催することにいたしました。
多くの若手の歯科医師にとって、同世代の歯科医師が異なるトップランナーの先生方の前で発表を行いフィードバックを受ける様子、そしてトップランナーの先生方の特別講演を通じて多くの学びが得られる機会になると信じています。また、ベテランの先生方にとっても、若手歯科医師とつながり後続に伝えていく場として。そしてもちろん先生ご自身の歯科医師としての学びの場として素晴らしい機会になると信じています。
歯科医療の明るい未来に向けて走りだす第1歩となるシンポジウムにしたいと考えておりますので、是非ご参加下さい。
2月17日 土曜日 講演内容
第1日目は、スタディーグループ3団体から代表者各2名による発表と各分野のトップランナーの先生方からのコメントとフィードバック、それに加えて杉元敬弘先生による特別講演が行われる。
発表
14:10〜14:40 『QOLの向上と安定に努めた1症例』
口腔機能及び審美障害がある高齢者患者に対して、臼歯部の咬合安定にインプラント治療、前歯部に 包括的治療を行い、QOLの向上を得る事が出来たのでこれを報告する。
14:40〜15:10 『デジタル技術を用いたインプラント治療とアウトカムの評価』
本発表では最新のデジタル技術を用いたインプラント治療に ついて、部分欠損から無歯顎修復まで様々な症例を通して提示するとともに、それらに関連して大阪大学大学病院で行われている研究内容についても少し紹介したいと思います。
発表の後半では、骨および軟組織造成術を併用した前歯部インプラント治療において、インプラント体唇側にどれだけの組織量が獲得されているのか、遅延埋入、抜歯即時埋入それぞれについて評価を行い、そこから術前診断時に おける造成術式の選択基準についても考察したいと思います。
15:10〜15:40 『Possibility of orthodontic treatment in restorative dentistry ~for preserve the natural teeth~
修復歯科における矯正治療の可能性~天然歯を保存するために~』
矯正治療と一言で言ってもその目的は様々で、咬合誘導を目的とした小児矯正から補綴前処置を目的とした成人患者への矯正治療、歯周病により病的な歯牙移動を起こした患者への矯正治療など幅広い。今回は『修復歯科 における矯正治療の可能性』と題し、私が日々臨床で行なっている補綴前処置の矯正治療にフォーカスをあて minimally invasiveな治療を心がけた臨床例を提示し解説したいと思う。
15:50〜16:20 『-予知性を考えた歯内治療- Endodontic treatment considering the predictability』
近年、マイクロスコープの導入により高倍率での治療が可能になり、肉眼に比べてより確実性の高い治療が可能になった。今回、歯内治療の予知性を考慮するために、様々な状態の患歯を大きく5つのグループにクラス分けし対応したのでこれを報告する。
16:20〜16:50 『A Young Dentist’s Perspective - Aiming for aesthetic and functional Prosthetic appliance results that stabilize over the long term -』
インプラント治療がルーティンワークのように行われている今の時代を生きる若手歯科医師にとって、また今後20年、 30年と続いていく自分自身の歯科医師人生において、患者の利益を最優先する治療計画を選択できるように生涯努力し続けていきたい。 本発表では若手歯科医師の視点から、天然歯の保存の重要性とインプラントの必要性およびその役割について 自分自身が携わった症例を通して反省点もふまえながら発表したい。
16:50〜17:20 『多数歯欠損に対してインプラントを用い咬合再構成を行った症例報告 -デジタルとアナログの相互補完を中心に- ”Multiple implant-supported occlusal reconstruction-case study” ~Taking advantage of the complementarity of digital and analog technology~』
本発表では、不適合義歯の長期装着により顎位の不正および咬頭嵌合位を失った多数歯欠損症例に おいて、咬合平面や咬合高径、適正下顎位やアンテリアガイダンス、そして安定した咬頭嵌合位といった咬合再 構成の5要素をデジタル上でシミュレーションを行い、最終的な補綴治療位や補綴物の設計を決定した上で、 インプラントの埋入位置やサイズ、本数を治療開始時に決定した。その結果として、治療期間は短縮することが でき、シミュレーション上で描かれたブループリントに近似した治療結果を得ることもできた。
デジタルが普及してきた昨今、デジタルの万能性を追求するのではなく、デジタルにしかできないこと、アナログにしかできないことを明確に区別し、これら両者の相互補完に注目した治療の流れを中心に発表したいと考える。
特別講演 Occlusion
17:30〜19:00 『歯科臨床におけるDigitalizationを考える
The seemingly inexorable“Digitalization”of dentistry...The real clinical ramifications』
歯科医療におけるデジタル化の波は大きなうねりとなって一般臨床にまで届きつつあり、もはや止めることは不可能 であることには異論のないところであろう。しかしながら、デジタル機器の導入には多大な投資が必要であり、CTに おいては患者の放射線被爆の機会を増やすという負の部分があることも考慮する必要がある。
このような現実をふまえると、アナログをデジタル化する真価とは同じ結果を得るために必要な時間、経費、労力が削減できることが 最低条件であり、さらにはアナログでは不可能であった知見や情報が得られなければならない。さらに、デジタル機器 に限ったことではないがこの情報の氾濫した時代にこそ、臨床に進化を求めて最新技術を導入することの意味に向きあう必要があると考えられる。
一般的に物事の進化を達成するための条件としては「手段」を変えることはもちろんであるが、それと同時に「目的」を変えないことが必須とされている。歯科臨床、特に補綴治療における原則 は「残存組織の保全」「咀嚼機能回復」近年では「審美の獲得」も加わり、その治療行為は予知性があるものでなければならない。この普遍的な「目的」を念頭に置きつつ歯科における”Digitalization”という「手段」について考えてみたい。
2月18日 日曜日 講演内容
第2日目は、4名の講師による特別講演が行われる。
特別講演 Denture
9:00〜10:30 『Reducing the Risk of Failure in Complete Denture Patients -総義歯治療を失敗しないために-』
インプラントを応用した補綴治療が治療オプションとして確立された現在、費用対効果の視点を含む適切な 医療提供の観点から「どのような総義歯が患者に受け入れられるか」の問いは世界的により重要性を増しています。その総義歯治療を成功させるにあたっては、全人的な高い技術が重要とされている一方、ドグマ(独断的な説・主張・意見)が生じやすいといわれております。
ここで我々は客観性を欠く情報に振り回されやすい状況に注意し、その患者の健康と高い満足のために、術式に左右されない診る目を養う、つまり評価する力を養わなければならないのではと考えます。演者は総義歯治療に特化して臨床を行っており、術者・患者ともにわかりやすい評価と、そして患者に受け入れられるアプローチについて日々思索しております。
本発表では 実際の臨床にて行なっているアプローチについて症例を供覧いただき、ご参加のみなさまと失敗しない総義歯治療のマネジメントについてディスカッションさせて頂きたいと思います。
特別講演 Perio & Implant
10:45〜12:25 『The quest for sustainable stability around Teeth & Implants“From the standpoint of a Periodontist”
天然歯およびインプラントの長期的な安定を求めて -歯周病専門医の立場から-』
現在のインプラント治療はごく一部の専門医だけでなく、多くの一般開業医が行う一般的な欠損補綴法のひとつとなっている。もちろんのこと、多くの患者が義歯からの解放、臨在歯の保護、審美的問題点の解決など、様々な局面でインプラントの恩恵に預かっていることはまぎれもない事実である。
その一方でインプラント治療の長期的な予後が報告されるようになってきたことから、インプラントに関わる様々な問題点も多く指摘されるようになって きており、インプラント周囲の感染症であるインプラント周囲炎はその代表格であろう。 医師が望むと望まないに関わらず、医師が行った医療行為の結果、患者の健康を害するものを「医原性疾患」と呼び、処置後すぐに判明 することあれば、数年や十数年後にそれと判明するものもあるのが厄介である。
いずれにせよインプラント周囲炎 は、われわれ歯科医師が患者の口腔内にインプラントを埋入しなければこの世には存在しなかった疾患であることには違いない。インプラント治療を学ぶ上で最も重要なことは、「インプラント学を学ぶ前に歯周病学を学ぶ」ことである。天然歯における歯周炎発症のメカニズムや発症そのものを制御する方法や歯周炎の治療法を学んでいない歯科医師に、どうして人工物であるインプラントの周囲組織を健全に保てることができるのであろうかとの問いは極めて妥当である。
歯周病専門医である演者が考える究極の歯周病治療とは、「歯周病にならないようにしっかりと予防する」ことである。また、究極のインプラント治療とは「インプラントを埋入しない」ことである。現在、 世界のインプラントをリードして来た先駆者達は、「この20年間我々は歯を残す努力と教育を怠り、如何に困難なケースにインプラントを成功させるかばかりを追求して来たのは大きな間違いだった。もっと歯を残すように教育をやり直すべきだ」とさえ言っていることに真摯に耳を傾けるべきであろう。
特別講演 Direct Bonding
13:25〜15:05 『修復部位・マージンの設定位置におけるMaterial Selection -歯を文化的進化させるための一手法-』
近年歯科材料は機能性や生体親和性のみならず、審美性をも向上させた多くの製品が開発され多様化が進んでいる。そのため適応の正確な判断が難しく、コンポットレジンと言えど多種多様存在する。セラミックスにも 同様のことが言え、全ての歯科材料を把握しきれていないのが現状である。またDirect Restorationとインレー・アンレーのボーダーも窩洞の大きさや深さ、残存歯質の厚み、咬合状態によってもどのように考えるか、基準が多くあり曖昧である。
マージンの設定位置も口腔内の環境、カリエスやぺリオのリスクによって縁上マージンにするのか 縁下マージンにするべきなのかの判断に困ることが多い。そこで今回「修復部位・マージンの設定位置における Material Selection」と題し,私の考えるDirect Restorationのボーダーやマージン位置の設定基準などケースを通し紹介したいと思う。
特別講演 Esthetic
15:20〜17:00 『Avoiding and Managing Complications in Restorative Dentistry - 修復治療における複雑化の回避とマネージメント -』
歯科修復治療の治療結果には、機能性や永続性だけではなく、審美性も強く要求されます。また、修復治療を必要とする患者には様々な状況が存在しますが、大きく次の6つに分類できるのではないかと思います。
1.わずかな咬合の変更を必要としても、基本的に修復治療のみで治療が完結する症例
2.歯冠長、又は辺縁歯肉の位置、形態に問題がある症例
3.咬合に問題があり、従前の咬合位を治療咬合位として利用できない症例
4.歯周病に罹患している症例
5.欠損を有する症例
6.歯の位置や顎骨に問題がある症例
それぞれの症例で主に選択される治療手技が違いますが、今回はそれぞれの症例の解決方法を整理すると共に治療の複雑化を回避し長期予後を獲得するためのマネージメントおよび、修復材料の選択基準について 臨床例を提示し参加される方々と討議したいと考えています。
シンポジウム詳細
日時: 2月17日(土)14:00 - 19:00 / 2月18日(日)8:50 - 17:10
場所: 東京都港区 笹川記念会館 国際会議場
費用: ドクター ¥20,000 / コデンタル ¥12,000