2018年5月20日日曜日、御茶ノ水にある東京医科歯科大学の歯学部特別講堂にて、今年で4回目となる『DENTAL CAREER SEMINER 〜その一歩が未来を左右する〜 』が開催された。
WHITE CROSSでは、参加者した学生、司会の中冨寛先生、ランチョンワークショップの丸尾勝一郎先生、そして主催の幡野紘樹先生にインタビューをさせていただいた。
歯科学生インタビュー
左から: 家泉 裕香さん/武田 渉さん/浅野 一磨さん
Q. 現在の学生生活の様子と、DENTAL CAREER SEMINER(以下、DCS)への参加のきっかけをお聞かせください
武田 渉さん 新潟大学歯学部6年生
武田さん
去年の冬から臨床実習が始まっており、毎日患者さんを配当いただいて、治療に従事しながら、国家試験の勉強を並行してやっています。
DCSには、3年前に幡野先生にご紹介いただいてから、毎年参加しています。
最初は参加者だったのですが、昨年あたりからもっと多くの日本全国の歯科学生に参加してもらいたいと思うようになり、今年は運営にも関わらせていただきました。
実は、私は浅野さんと一緒に Student Clinician Resarch Program という歯科学生の研究大会に出ていました。SCRPには、全国の歯科大学29校の学生が集まります。そこで出会った各大学の学生に連絡を取り、声がけをした結果、九州や四国などからも参加してもらえる大きな大会になりました。
浅野 一磨さん 東京歯科大学6年生
浅野さん
私は私立大学の最終学年なので、ちょうど4月中旬から国家試験対策が始まっており、日々講義を受けてます。
私たちは近い将来、歯科医師になります。卒業して歩み始めてから、この道は自分に合わない道だったなと思って方向転換するのでは遅いのかなという危機感があります。そのためにも、今のうちから選択肢を広げるためにも、多くの人にあって人脈を広げていきたいと思っています。
DCSには、ちょうど1年前の前回大会から、武田くんに誘われたことがきっかけで参加させていただきました。そこで普段お会いできない先生方の話を聞かせていただくことができました。GPの先生や専門医の先生のお話を生でお伺いし、すごく刺激を受け、今年も参加させていただきました。
家泉 裕香さん 昭和大学5年生
家泉さん
私はまだ5年生なのですが、ちょうど数ヶ月前からポリクリで病院実習に入りました。
DCSには、今年から参加しました。私は編入生なので、同級生より少し年齢が高いんです。その意味合いで、現役生にとっての卒後10年と、私にとっての卒後10年はライフステージ上で、違う意味を持つのではないかと考えています。卒後にいろいろなことを経験しながら、自分の歩むべき道について少しづつ答えを出していくことも素晴らしいと思いますが、私の場合は、できるだけ早く様々な選択肢を見て、目標を見つけて走り出したいという思いがあり参加しました。
Q. DCSの感想をお聞かせください。また、歯科医師としての ”夢” のきっかけみつかりましたか?
家泉さん
歯学部の学生として、「卒業してどのような歯科医師になるか、これからの歯科医療をどのように担っていくべきか」ということも大切なのですが、まずは目の前の国家試験に合格しなければ何もできません。
普段の生活ではそちらに目を向けがちなのですが、DCSを通じて外の世界に目を向けると、「歯科医師になるまでのこと」はよく考えているのですが、「なってからのこと」はあまり考えてこなかったことを感じさせられます。
武田さん
学生生活の中では当然のことですが、大学の外に広がる歯科医療のイメージが得ることができませんでした。文字通り大学を卒業して、大学院に進む。あるいは臨床研修を終えたら、開業医に務める。そういう漠然としたキャリア以上に、未来のイメージがありませんでした。
DSCに参加すると、本当に様々なキャリアでご活躍されている先生の話をお伺いできますので、歯科医療界に広がりや様々な生き方があることを知ることができました。
岩永先生のお話にもありましたように、様々な山を知ることができ、具体に基づいて自分の登りたい山を探すことができるようになったと感じています。
歯科医療に重ねる夢ですが、私の原点は、幡野先生との出会いです。そのため卒後は、GPとして研鑽を積みたいと考えています。しっかり研鑽をして専門医や歯科衛生士としっかりとした連携を取って、患者さんのためを思い、向き合える歯科医師になりたいなと思っています。
浅野さん
私の父は山形で開業しています。最終目標は、父の後を継ぐことです。それを達成する上で、強みとなる専門性としてペリオを学びたいと考えています。歯周病の治療が全ての基本にあるということを、多くの先生から伺っておりますし、予防という概念においても、GPとしてやっていく上でも、必ず必要なものとして捉えています。
家泉さん
私も両親が歯科医師として開業しています。将来的には実家を継ぐために、GPをめざしています。
そして、予防歯科のための小児歯科にすごく興味があります。
今は、小児歯科で大学病院に残るべきなのか、開業医で学ばせていただくべきなのか、小児歯科の専門医を取得するべきなのか・・・実家を継ぐまでにどのような道を歩むべきかをすごく悩んでいます。
海外に出る先生、専門医を取得する先生やあえて取得しない先生、いろいろな選択と理由があるので、先輩方からその背景となる思いを聞かせていただけることはすごくありがたいです。
Q. 歯科医療に希望を持っていますか?
武田さん
希望を持っていると言うより、こういうセミナーを一緒にしてもらえる、同じ志の仲間がいるから希望を持てるという感じかもしれません。
歯科医療へのマイナスの言葉を聞くことや、週刊誌でそういう記事を見ることなどは確かにありますが、希望を見出していきたいと思っています。歯科を良くしていきたいと思っている人たちとつながり、明るくしていきたいと思います。
浅野さん
誰かが変えてくれるのをただ待っているだけではなく、今の力がない自分なりに、できることをしていきたいと思っています。そのための様々な先生方の考えを学び、共有していきたいです。歯科医療の未来が暗いのか、明るいのは、私にはまだわかりません。でも明るいと信じていたいと思っています。
家泉さん
「日本の歯科医療を明るいものにしよう」と言えるようなガラではないのですが、私にとって歯科医療は天職だと思っています。
両親、叔父、叔母、、、親戚はみんな歯科医師でした。小さいころは、歯科医師になることが当たり前と思われている環境が嫌で、文系の大学に行き、普通に就職しました。そして、やはり自分は歯科医師になりたかったことに気付き、編入学しました。
最初は、両親の後を継ぎたい、歯科医師になりたいという思いだけで、歯科医学とか社会の中の歯科医療の役割や担っているものを考えていませんでした。しかしながら、勉強すればするほど歯科は面白く、社会を知れば知るほど歯科が社会の役に立つものであることを学ばせていただいています。本当に毎日が楽しく、希望を感じています。
司会 中冨 寛先生
今回お話をさせていただいた中で、私が一番年長なのですが、他の演者のみなさんの講演が全てすばらしく、逆に私自身が歯科医療にかける新たな夢の姿を見させていただきました。
参加者の皆さんにとっても、自分の歩む道を見つけるきっかけになったかと思います。
これから先のこととして、私自身、勉強させていただきましたことを私のクリニックのスタッフ達にも伝えていきたいと思います。来年は、スタッフを連れて来たいと思える。そんなセミナーでした。
丸尾 勝一郎先生
多くの若い先生や研修医、そして学生が参加しており、熱気にあふれており、全然寝ている参加者もおりませんでした。今後の歯科界が非常に楽しみである共に、将来的に彼らとつながって歯科界を変えていければと思いました。
主催 幡野 紘樹先生
私がまだ勤務医だった頃、山形県の日吉歯科に勤めさせていただいていたのですが、国内外の先生方が訪れてくださっていました。そのおかげで、開業医の先生から著名な先生も含めて交流させていただく機会が数多くありました。
私の歯科医師としての基軸はもちろん、師である熊谷先生が与えてくださったのですが、今日演者を務めてくださった先生方からも多くの学びをいただきました。
歯科医療界は素晴らしい先生方であふれています。その先生方のお話をもっと若い方々が聞いたら、それぞれのキャリアを考える上で、良い参考になるのではないかと思ったのがDCSのきっかけです。最初は40人の参加人数も、回を重ねるごとに80人、100人と口コミで次第に参加者が増えてきてくれました。
喜ばしいことに、1年目は私が必死になってビラを配ったりしていたのが、今年は、学生さん達が自分たちで参加者を160人を集めたのです。若い世代の力はすごいく、彼らもまた情報を求めているのだなと感じました。
学生さんや若い先生が、尊敬できるような先生方とつながってくれれば、そこから道を指し示す何かをえてもらえるのではないか、それが歯科医療の発展につながるのではないかと思っています。
できれば全国の歯学部から学生に集まってもらいたいです。また、逆に僕らが全国に行きたいというのもあります。実は去年は、新潟に呼んでいただきサテライトを開催させていただきました。
今ネックなのが、運営費の問題ですね。参加費を千円のみいただいて、お弁当代などを出しています。歯科医療の未来を思い、協力してくださる企業が一社でも多くお力添え下さることを願っています。
来年も開催させていただきます。ぜひご参加下さい。
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。