今回レポートするセミナーは『確実にやれば十分なおる 米国歯周病専門医がお話しする歯周治療の基礎』。内容は口腔衛生指導とSRPの2部構成となっており、私自身もさっそく臨床に取り入れたほど実践的な内容であった。
特に口腔衛生指導(OHI:Oral Hygiene Instruction)というワードは、最近の歯科雑誌でも多く取り上げられているので要チェックだ。
講師はアメリカ合衆国歯周病・インプラント外科専門医で、安増歯科医院の院長を務める安増一志先生。歯周治療に力を入れている先生方、歯科衛生士にOHIの教育を行いたい先生方、患者さんへのOHIに悩んでいる先生方は特に必見のセミナーである。
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プラークコントロールの基本的な考え方
歯周治療の基本は、細菌や細菌性プラークをどのように取り除いていくかである。この考え方はこの100年変わらないと安増先生は言う。
第1回では、細菌や細菌性プラークの除去方法を3つに分けて解説している。
① 歯間部の清掃
歯間部の清掃方法にはフィンガーフロス、柄付きフロス、歯間ブラシがある。安増先生は、どの清掃用具を使用するかよりも、歯間部の清掃を長期的に実践してもらうことが重要だと話す。
フィンガーフロスと柄付きフロスの使用継続率を調べた論文が紹介されたが、それぞれの継続率には大きな差があるようだ。歯間部清掃のポイントは『何を使うか』ではなく、『実際に使うか』であると安増先生は力説した。
患者が毎日フロスをしない理由はたった2つ
② 歯ブラシによるブラッシング
ブラッシングに関する臨床的な疑問にも多くの解説がなされた。以下にセミナー中に取り上げられた疑問をいくつか紹介する。
・おすすめの歯ブラシはありますか?
・電動ブラシはどうですか?
・歯ブラシはいつ変えたらいいです?
・どのくらいの時間磨いたらいいですか?
・1日に何回磨いたらいいですか?
・どのくらいの力で磨いたらいいですか?
それぞれの疑問に対し、エビデンスと安増先生の考え方をまじえ、丁寧に回答されている。
③ 洗口液による洗口
洗口液による洗口は化学的なプラークコントロールに該当する。セミナーではクロルヘキシジン、リステリン®、CPCについてメリットとデメリットが解説された。
結論としては、クロルヘキシジンがスタンダードではあるものの、リステリン®も有効であるとのこと。しかし、洗口液は歯間部には効果はなく、あくまでも機械的なプラークコントロールに対する補助であるということに注意したい。
口腔衛生指導に対する安増先生の考え
歯周病の検査で気をつけること
第2回の内容は、歯周病の検査とSRPについて。前半では視診、歯周ポケット検査、X線検査について注意しなければいけないポイントが説明された。
■視診
安増先生は歯だけを見るのではなく、歯肉もしっかりと見ることが大切だと語った。
歯石はもちろん、歯肉の発赤も見逃さない。歯肉が発赤しているのは、そこに炎症が存在しているためである。
■歯周ポケット検査
日本では保険診療の都合上、6点法による歯周ポケット検査が難しい場合がある。しかし、歯周基本治療中に少なくとも1回は精密検査を行うことが歯周治療を成功させるポイントとのことだ。
■X線検査
歯周病の診断のためには14枚法などのデンタルX線写真が適切だが、日本では保険診療の都合上難しい場合がある。少なくともパノラマだけでも撮影する方が良いとセミナーでは述べられている。特にパノラマにうつる歯石は非常に大きいため、患者にもその旨を説明すると良いという。
歯石はパノラマでも映り、パノラマで見える歯石は大きい
正しいSRPとは?
正しく歯石を除去するためには、歯石を探知することが大切だ。セミナーでは、探知と除石時のキュレット操作の違いや注意点が図を用いてわかりやすくまとめられて、どのくらいSRPをやる必要があるのか、何回ストロークをした方がいいのかなど、基本的な疑問にも回答してくれている。
また、さまざまな論文があり明確なものはないと前置きした上で、安増先生の考え方や根拠とする論文が数多く紹介された。
歯根表面のデブライドメントとエンドトキシンの除去に関する論文が紹介された
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歯周治療においてプラークコントロールは大切だと分かっていても、具体的な口腔衛生指導の方法に悩むケースは多い。特に、SRPについてはDHに任せっきりになってしまっている場合もあるのではないだろうか。
患者さんへの説明だけではなく、DHの教育にも役立つ本セミナー。気になる先生はぜひチェックしていただきたい。
執筆者
臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。