歯周病患者に根拠のある患者指導がしたい! 第8回「歯の移動と歯周病についてどう説明する?」の画像です
経営 2029/11/05

歯周病患者に根拠のある患者指導がしたい! 第8回「歯の移動と歯周病についてどう説明する?」

WHITE CROSS編集部
Todoに追加しました
マイページのTodoリストを確認すると読み返すことができます。
Todo数が上限に達しました
追加済みTodoを完了してください。
エラーが発生しました
解決しない場合はお手数ですが運営までお問い合わせください。
Todoリストから削除しました
Todoリストに戻しました
エラーが発生しました
解決しない場合はお手数ですが運営までお問い合わせください。
お気に入り

・歯周病認定医・専門医で構成されているPerioBox。今回のお題は、「歯の移動と歯周病についてどう説明する?」  
・歯の移動と歯周病について根拠のある論文とは?

 

この記事は、歯科衛生士向け>基礎知識・心得

歯科ジャンルサーチ

同ジャンルのコンテンツは歯科ジャンルサーチに掲載中↑

 

はじめに

皆さんは、歯周病患者にどのような指導を行っていますか?


歯周病患者さんへの指導方法に、頭を悩ませた経験がある方も多いのではないかと思います。
このページでは、科学的根拠に基づいた質の高い治療を行うための患者指導媒体の利用方法をご紹介します。


今回は、「歯の移動と歯周病についてどう説明する?」と題して作成した指導内容をご紹介します。

 

患者指導媒体の活用にあたって

執筆:鈴木 瑛一、吉田 航(PerioBox)


クリックでダウンロードページへ

 

どのように説明する?この媒体の活用方法はこちら!

 

 

 

歯周病は慢性的な炎症であるため、歯の動揺を自覚したときには症状が大きく進行している場合も多々あります。

 

そのため、疼痛ではなく歯の移動を主訴に来院する患者さんも多いのです。

 

炎症により歯が移動することや、治療による炎症の除去により、移動してしまった歯が元に戻る可能性があることを説明することは、患者さんの治療に対する理解やモチベーションアップに繋がります。

 

特に動揺歯をすぐに固定してほしいという患者さんもいるため、固定時期の判断等を説明する必要があります。


本論文では、1mm以下の小さな歯間離開であれば、適切な歯周治療を行うことで歯間離開の完全閉鎖をもたらす可能性が高いことが示されました。

 

加えて、歯周外科治療を行うことでさらなる改善も期待できます。

 

Rohatgi1)らは1mm以下の歯間離開では、65.38%で完全閉鎖が認められ、96.15%で治療後の歯牙移動が起きたと報告しており、本論文と同様の結果を示しています。

 

しかし、歯牙移動距離の正確な予測は困難であり、矯正治療や補綴治療の開始時期については、治療後の再評価をしてから慎重に判断する必要があります。


Towfighi2)らは、歯周炎患者の病的歯牙移動を評価した結果、歯牙移動した歯は移動していない歯と比較して、アタッチメントロスが有意に大きかったと報告しています。

 

歯間離開を起こしている歯では骨欠損やアタッチメントロス、動揺度などが大きくなる可能性が高く、その場合は骨移植を含む歯周外科や歯牙の固定などが想定されます。

 

本論文では、骨移植材を併用した歯周外科を行うと歯牙移動を妨げる可能性があると示唆されており、歯牙移動が起きる場合では、移動を妨げる可能性のある外科治療や歯牙固定に関してよく検討する必要があるでしょう。

 

1)Clinical evaluation of correction of pathologic migration with periodontal therapy.Rohatgi S, Narula SC, Sharma RK, Tewari S, Bansal P.Quintessence Int.2011Jan;42(1):e22-30. PMID:21206927https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21206927/
2)Pathologic migration of anterior teeth in patients with moderate to severe periodontitis.Towfighi PP, Brunsvold MA, Storey AT, Arnold RM, Willman DE, McMahan CA.J Periodontol.1997Oct;68(10):967-72.doi:10.1902/jop.1997.68.10.967.PMID:9358363.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9358363/

 

 

根拠のある論文はこちらから

歯周組織の維持が失われることで、歯のポジションが本来の位置から変化する病的歯牙移動(PTM)は、歯周病患者で認められる特徴の一つである。PTMを伴う中等度~重度歯周炎患者16名(33部位)に対し、SRPや必要な場合は咬合調整やフラップ手術(骨移植などの歯周組織再生療法を含む)などの歯周治療を行い、歯間離開距離(SP)を調査。評価時期は初診時、歯周基本治療後6週、歯周外科治療後4ヵ月であり、SPをスコアごとに評価した(Score 0: SP<0.1mm、Score 1:0.1mm≦SP<0.5mm、Score 2:0.5mm≦SP<1mm、Score 3:SP≧1mm)。その結果、全体の69.7%で歯間離開距離の減少が認められ、そのうち基本治療終了後に大きく改善した割合が48.5%、歯周外科後にさらに改善が認められた割合は38.1%であった(骨移植材を用いた再生療法では62.5%でSPに変化が認められなかった)。Scoreごとの評価で、SPはすべてのScoreで減少が認められ、初診時のScore1、2部位では、7割以上で歯周外科後4ヵ月での完全閉鎖が認められた

Gaumet PE, Brunsvold MI, McMahan CA. Spontaneous repositioning of pathologically migrated teeth. J Periodontol. 1999 Oct;70(10):1177-84. doi: 10.1902/jop.1999.70.10.1177. PMID:10534072.

 

 

***

 

 

今回は、歯周病患者への根拠ある患者指導の内容を、メンバー全員が歯周病認定医・専門医で構成されたPerioBox監修で、わかりやすく画像付きでご紹介しました。

患者さんだけでなく、歯周病治療を行う歯科衛生士やスタッフの教育にもぜひご活用してください。

 

執筆者

PerioBox

Perio Boxは2019年に発足し、日本歯周病学会認定医・専門医により構成されています。

主に歯周病・インプラント関連の論文抄読や情報交換を行っております。

Perio Boxアプリではさらに豊富なコンテンツをご紹介 

 

画像クリックでアプリダウンロードページへ

 

ペリオボックスは、2019年に日本歯周病学会認定医・専門医によって発足しました。

主に歯周病・インプラント関連の論文抄読や情報交換を行っています。抄読した論文の要点や議論された内容、活動報告は「4枚のスライド」にまとめ、Facebookグループ “Perio Box” で配信するなど、多くの歯科医療従事者の知見を深めてきました。

 

2022年3月には、Facebookグループで蓄積した抄録スライドを搭載した “Perio Box App” をリリース。現在までに配信した200編以上の抄読スライドをすべて無料で読む事ができるほか、検索機能やカテゴリ分類により、興味のある文献への素早いアクセスが可能になりました。

 

ご興味ある先生方は、Facebookでのメンバー登録、またはアプリのダウンロードにてご参加ください。

 

 

この記事は、歯科衛生士向け>基礎知識・心得

歯科ジャンルサーチ

同ジャンルのコンテンツは歯科ジャンルサーチに掲載中↑

執筆者

WHITE CROSS編集部

WHITE CROSS編集部

臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。

記事へのコメント (0)

人気記事ランキング

おすすめLiveセミナー

Top / ニュース / 記事一覧 / 歯周病患者に根拠のある患者指導がしたい! 第8回「歯の移動と歯周病についてどう説明する?」