5月25日、1都3県における新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除されようとしており、4月7日から約2ヶ月に及んだ戦後最大の危機は収束に向かいつつある。
結果として、日本国内の累計感染者数は約1万7千人・回復者数は約1万3千人、死亡者数は8百人台という先進国の中でも類を見ない低水準で推移しており、緊急事態宣言の最大目的であるCOVID-19の感染拡大防止という点においては一定の成果をあげたと言える。ロックダウンを行わずに、「日本の奇跡」と言われる今日に至れた理由は、時間の経過とともに解明されていくのであろう。
これからの日本社会は、COVID-19が生んだ社会的影響に立ち向かいながら、段階的に経済を再開していくことになる。その中において、歯科医療として向き合わなければならないことも数多くある。一部のマスコミによる負の影響などは大いにある。各種メディアによる煽るような報道により生まれた歯科医療への恐怖は、歯科医療界が真の出口を迎える上で是正しなければならない"ひずみ"と言える。
その中においても、フレイル対策の最前線にたち、誤嚥性肺炎の予防などに深く関わっている歯科訪問診療機能は、人の命に関わる領域でもあり早期に再開させなければならない。
5月21日、千葉県歯科医師会はそのホームページ上で、千葉県民に向けて「〜新型コロナウイルス対策Vol.2~ 歯科訪問診療への提言」というタイトルで砂川稔会長によるビデオレターを公開した。
WHITE CROSSでは、日本国民に "届けたい言葉" として、千葉県歯科医師会に許可をいただきメッセージとビデオレターの掲載をさせていただいた。
千葉県民の皆さまへ ~歯科訪問診療への提言~
千葉県歯科医師会
出典: YouTube_千葉県歯科医師会_「-新型コロナウイルス対策-歯科訪問診療への提言」
ビデオレターの中で砂川会長は、基礎疾患を持ち介護施設や病院に入院している高齢患者が数多くいるということ、そして歯周病と全身疾患の関係性について語った。その上で、千葉県内の介護施設へのアンケートを通じて見えていた、早期に解消しなければならない"ひずみ"について示した。
アンケート結果によると、現在、歯科訪問診療を受け入れていない・自粛中だか緊急時のみ対応している施設は43%に及ぶという。また、これらが受け入れ停止や自粛に至った経緯として、施設側からの申し入れが87%、歯科診療所側からの申し入れが13%だという。また、そろそろ再開したい・緊急事態宣言が終ったら再開をするという施設が、57%であるという。
結果として、何も起きていないのであれば問題ないが、同アンケートによると既に多くの施設においてトラブルが起きていることも示されている。
出典: YouTube_千葉県歯科医師会_「-新型コロナウイルス対策-歯科訪問診療への提言」
このことからも、今現在、歯科医療としての"必要"を提供できていないことがわかる。
千葉県歯科医師会の活動を受けて
COVID-19の感染対策における千葉県歯科医師会の一連の活動は、目を見張るものがあった。4月16日、出口が全く見えない混沌期において、歯科医療従事者に向けたメッセージを発し、その心に寄り添った。経済再開が議論され始めた5月上旬には、県民に対して歯科医療受診に対して”正しく恐る”ことの意味と基準を示した。
そして、緊急事態宣言の解除のタイミングで、歯科医療界として解消するべき"ひずみ"を明確に提示し、その解消に向けた提言を行った。今回は、千葉県歯科医師会を取材させていただいたが、日本全国に同様の活動を行った歯科医師会がある。
振り返るとコロナ禍は、歯科医療で働く全て人に影響を与えた、戦後初めての災害だったのではなかろうか。そして、そこにおいて歯科医師会や歯科医師連盟の役割やその活動価値の高さが再認識されたのではなかろうか。
歯科医師会や歯科医師連盟の会員・非会員問わず、日本で歯科医療を行う以上、全ての歯科医療従事者が歯科医師会や歯科医師連盟の活動の恩恵を何らかの形で受けている。他のルートから日本の歯科医療を面として良くしていくことは不可能であることから、コロナ禍をきっかけに、これらの団体が所属人数としても組織体としてもより強くなっていくことを願う。