この記事のポイント ・接着修復を行うには、まず修復環境を整えることが大切。 ・近年、PTFEテープを併用してラバーダム防湿を行う手法が登場。 ・接着修復を成功に導くのは、シチュエーションに応じた正しい防湿。 |
はじめに
近年の接着歯学における凄まじい発展に伴い、臨床現場では化学的接着を主体とした修復処置(接着修復)が主流となっている。これは、歯科医学における研究者の多大なる努力によって蓄積されたエビデンス(科学的根拠)はさることながら、歯科材料メーカーの日々の努力によって生み出された接着材料、そしてすべてを集約して確立された修復処置におけるプロトコルによって成り立つものである。
しかしながら、臨床現場で遭遇するのは、実験室のように湿度や温度、そして修復環境がコントロールされた場面だけではない。接着修復を行う上で不利な環境の中で修復処置を行わざるを得ないケースも少なくない。
このような状況下で我々に必要なのは修復環境を整えること。いわば“接着修復に特化したフィールドコントロール”を行う必要がある。それはラバーダムのみではなく、状況に応じて術者の持ち合わせるさまざまな選択肢の中から最適なものを選ぶことが大事であり、その選択肢が多いほどあらゆる局面に対応することができると感じている。
画像はセミナースライドより抜粋
PTFEテープを用いたラバーダム防湿とは
ラバーダム防湿はというと、学生の頃にさらっと習った印象があると思うが、対象となる1歯のみを防湿する方法から隣在歯も含む多数歯を露出させる方法、そしてクラウンやベニアなどに設定される歯肉縁下マージンまで露出させることが可能なスプリットダムが国際的にみても主流である。
そして近年、上記の方法にPTFEテープ(テフロンテープ)を補助的に組み合わせてさらなる防湿を図る手法は国際誌においても報告されており、いろんな手段を用いてフィールドコントロールを行い接着環境を整えることは当たり前の時代となっている。
画像はセミナースライドより抜粋
正しい防湿が接着修復を成功に導く
もちろんラバーダムをただ単にかけていてはしっかりとした防湿ができていない可能性もあり、ラバーダム防湿を行う上で気をつけるべきポイントを押さえることが重要である。
筆者自身、何もコントロールをせずに接着修復処置を行った際、その治療の予後を考えるととても恐ろしく感じてしまう。一方でしっかりとフィールドコントロールされていれば、接着材料のパフォーマンスを最大限に引き出せるという安心感のもと落ち着いて処置を行えるため、心理的な面でもプラスに働くと考える。
ただし、ラバーダム防湿はあくまでも選択肢の一つであり、適用できない状況もあることを想定して他の選択肢も持っておく必要がある。そのためには防湿という点においてラバーダムと同程度のパフォーマンスを発揮ができる手法を選ぶ必要があり、どの方法が最適なのかという知識も必要である。
画像はセミナースライドより抜粋
詳しくはWHITE CROSSのセミナーで
接着修復を成功に導くためのエビデンスに基づいた歯科医療を行うにあたり、環境をできる限り整えるためにはどのような知識、テクニックが必要なのか。
今回行うセミナーでは、さまざまなシチュエーションごとに筆者が行っているラバーダム防湿方法やPTFEテープを補助的に使用した方法、そしてラバーダムによる防湿が行えない状況下での対応方法について、症例を交えながら理論的に解説していく。
接着修復におけるフィールドコントロールを身に付けようと考えている歯科医療従事者の手助けとなり、皆様の学びが多くの患者様へと還元されることが筆者の願いである。
執筆者
林 明賢
歯科医師・歯学博士
横須賀市出身。長崎大学にて臨床研修修了後、東京医科歯科大学、田上教室にて接着修復を中心とした研究結果に裏付けられた臨床技法を学ぶ。自身の主な研究ではNCCLの長期予後を調査。大学院在学中にフロリダ大学へと留学し光照射器に関する研究に従事、同時に米国専門医プログラムであるGraduate Operative and Esthetic Dentistry Program を受講。2019年には東京医科歯科大学にて海外研究奨励賞を受賞。