先生は歯科用CTを使いこなせていますか?クイズを解いて、CTマスターを目指しましょう!
Question1. 歯周膿瘍の憎悪因子は何? Question2. 骨欠損形態はどれか? Question3. 深い歯周ポケットと腫脹の原因は何か? |
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Q1. 歯周膿瘍の憎悪因子は何?
64歳男性。「左下の前歯が腫れた」と受診した。骨隆起が全顎的に顕著で、限局的な歯周膿瘍の#32、#33には歯髄生活反応を認めたため、当日は急患対応にて消炎処置で終了とした(図1-1)。
(
図1-1)
後日予約時の検査データを示す(図1-2)。主訴の生活反応のある患歯#32、#33以外は3mm以下のプロービング値を示していた。
(図1-2)
該当部位のデンタル再撮影画像とCT画像(図1-3)、該当部位のCT画像(動画1-1)を以下に示す。
(図1-3)
(動画1-1)
Q. 歯周膿瘍の増悪因子と思われるのはどれか。
①垂直性歯根破折
②根面溝
③う蝕
④副根管(側枝)
⑤セメント質剥離
Answer
CBCT画像(動画1-2、図1-2、図1-3)から、#32、#33間に舌側の皮質骨(骨隆起)が厚く残存した1壁性骨欠損と、#32遠心面に根面溝が認められた。また、その骨欠損は#32根尖付近にまで及んでいた。
舌側の厚い皮質骨(骨隆起)のため、デンタルエックス線写真(図1-1、図1-3)では骨欠損像がわからない。
(動画1-2)#32、#33間の1壁性骨欠損と#32遠心面の根面溝のCBCT画像診断操作。
(図1-2)#32、#33間の1壁性骨欠損と#32遠心面の根面溝のCBCT画像(横断像、冠状断像、ボリュームレンダリング画像)。黄矢印は根面溝。
(図1-3)ボリュームレンダリング画像。ヒストグラムウィンドウ内の「色ビューの機能」から右肩上がり型のオパシティカーブを選択して、歯、骨などの比較的ボクセル値が大きい対象物を表示した状態。この方法においても、根面溝(黄矢印)のみを明確に検出できる。
歯周基本治療終了後に残存した歯周ポケットに対して歯周組織再生療法(リグロス®)を実施した(図1-4)。
(図1-4)歯周基本治療終了時の口腔内写真と歯周精密検査、および歯周組織再生療法時の写真。
術後6ヵ月が経過し、#32、#33のプロービング値は全周3mm以内で、CBCT画像上(図1-5)では、#32、#33間の1壁性骨欠損に歯槽骨の再生が認められた。
(図1-5)術後6ヵ月のCBCT画像。
A.② 根面溝
Q2. 骨欠損形態はどれか?
53歳男性。「全体的な歯周病を治したい」と受診した。矯正治療は希望されなかった。
歯列不正のある#12、#13、#14の歯間部には出血を伴う7-8mmの歯周ポケットがあった。#12、#13は歯髄生活反応を示さず、根尖を起源としたSinus Tractが認められた。
(図2-1)#13、#14間と#12、#13間の歯肉にSinus Tractを認める。ガッタパ―チャポイントを挿入したデンタルエックス線では、歯髄失活を認める#12、#13の根尖を指している。
#12、#13の根管治療と全顎の歯周基本治療を実施した。#12を起源としたSinus Tractは消失したが、#13を起源としたSinus Tractは消失しないため歯根端切除術を、そして、#12、#13、#14に残存した深い歯周ポケットに対しては歯周外科治療を計画した。外科治療前の資料と、ガッタパーチャポイントをSinus Tractから挿入したレントゲンを以下に示す。
(図2-2)歯列不正による歯が障害して、歯頚部の歯槽骨欠損状態の詳細が分かりにくくなっている。
Q. #12、#13、#14で考えられる骨欠損形態はどれか?
① Fenestration(開窓)
② Dehiacence(裂開)
③ Through and Through
④4壁性骨欠損
⑤クレーター状骨欠損
Answer
CBCT画像(動画2-2)から、#13根尖部の死腔と側枝を疑い、根尖部遠心側にFenestrationが認められた(図2-3)。
(動画2)外科治療前の骨欠損形態の確認。
(図2-3)#13根尖部のCBCT画像。根尖病変によって、部分的に生じたFenestration(紫矢印)が遠心根尖部に認められた。
また、#13 #14と、#12 #13間の骨縁下欠損はクレーター状骨欠損を認め、唇側転移している#13の唇側には薄い骨が存在しており、Dehiacence(裂開)は認められなかった(図2-4、図2-5、図2-6)。
(図2-4)ボリュームレンダリング画像上のボリュームの切断の仕方。
(図2-5)切断後のボリュームレンダリング画像。#12、#13、#14の歯冠部分を「ボリュームの切断」にて切断し、クレーター状骨欠損(青矢頭・緑矢頭)が明示できた。
(図2-6)#13 #14間と#13、#12 #13間の矢状断像。#13 #14間と#12 #13間のクレーター状骨欠損(緑矢印)と、#13唇側には薄い骨(赤矢印)が認められる。
歯列不正のある患歯では、デンタルエックス線写真(図2-2)による二次元情報には限界があり、術中に思わぬ落とし穴が存在することは少なくない。CBCTは、歯列不正があったとしても三元的に骨欠損状態を把握でき、患者負担の少ない手技・手順と手術計画を立てることができる。
CBCT画像検査から、#13 #14間と#12 #13間のクレーター状骨欠損と、#13唇側には薄い骨(赤矢印)が認められた(図2-6)。特に歯列不正で唇側転移した#13の唇側の骨の存在確認には注意が必要で、もし、骨が無いことを気付かずに歯周外科を進めてしまうと、術後の歯肉退縮等の可能性がある。
本症例では、CBCT画像検査の結果をふまえ、各手術は別日に別々に行うことはせずに#13の歯根端切除術と、#13 #14間と#12、#13間の歯周組織再生療法(リグロス®)を同日に実施することができ、患者負担を最小限に抑えられた(図2-7、図2-8)。
(図2-7)#13歯根端切除術と、#12、#13、#14の歯周組織再生療法。同時日に実施することができた。
(図2-8)術直後のデンタルエックス線写真。
術後2年が経過し、Sinus Tractの消失と#12、#13根尖病変の治癒を認め、プロービング値は全周3mm以内となり歯周組織は安定している(図2-9)。
(図2-9)術後2年経過の口腔内写真、デンタルエックス線写真、歯周精密検査。
A.①開窓、⑤クレーター状骨欠損
Q3. 深い歯周ポケットと腫脹は何か?
81歳女性。「下の前歯の裏が腫れた」と受診した。ビスフォスフォネード系製剤を長期投与している。
歯髄生活反応を認めた#31の舌側中央部に6mmの深い歯周ポケットと腫脹が認められた(図3-1)。
(図3-1)初診時の口腔内写真と歯周精密検査。#31の舌側に歯肉腫脹を認める(青矢印)。
Sinus Tractに挿入したガッタパーチャポイントは#31の遠心の根尖1/3を示し(図3-2)、正放線投影法と偏心投影法によるデンタルエックス線写真においては同部位で骨梁の変化をわずかに認める程度であった(図3-3)。(図3-2)ガッタパーチャポイントをSinus Tract に挿入したデンタルエックス線写真。
(図3-3)正放線投影法と偏心投影法によるデンタルエックス線写真。骨梁の変化が認められる(白矢頭)。
Q. この歯周ポケットとSinus Tractは何か?
①根尖性歯周性
②歯肉癌
③歯周膿瘍(セメント質剥離による)
④セメント質骨性異形成症
⑤侵襲性歯頚部外部吸収
Answer
唇舌側面の変化においてはデンタルエックス線写真では診断が不可能である。
CBCT画像(動画3、図3-4、図3-5)から、深い歯周ポケットと歯肉腫脹に該当する#31の舌側歯根表面上にセメント質剥離とともに、重度な歯槽骨破壊が認められた。
セメント質剥離に対する3次元的な診断(CBCT撮影を推奨)やそれに対するアプローチはLeeら1)により、まとめられているため参考にしていただきたい。
1)Int Endod J. 2021 Nov;54(11):2044-2073.
(動画3)セメント質剥離を認めたCBCT画像。
(図3-4)CBCT画像(モノクロ画像と反転画像)。#31の舌側歯根表面上に歯根長1/2程度の線状の不透過を示すセメント質剥離(黄矢頭)が認められる。
根尖付近にまで及ぶセメント質剥離と重度な歯槽骨破壊、ビスフォスフォネード系製剤の長期投与もあり、整形外科医との情報共有のもと、抜歯を実施した(図3-5)。
(図3-5)抜去した歯。舌側表面にセメント質剥離を認める(黄矢頭:セメント質剥離の一部)。
A.③ 歯周膿瘍(セメント質剥離による)
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口腔内には歯周組織(セメント質、歯根膜、歯槽骨、歯肉)や歯科用材料など、あらゆるものが混在し、構成されている。そのため、歯科疾患の診察には各種検査が実施され、診断へと導かれる。特にX線検査は重要で、その適切な診査による病態の把握は治療の難易度や予知性、治療計画の立案に繋がる。しかしながら、デンタルX線写真による2次元情報では、診断に必要な読影の情報に限界がある。一方で、CBCTによる診断のための操作は、高精細な3次元情報を得ることができ、診断精度を高めてくれる。その情報は術者側の利点だけではなく、患者側においても、病態の現状を共に正しく、かつわかりやすく説明でき、治療への理解の重要性へと繋がる。
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67歳男性。#12の歯周組織再生療法直後に痛みが出現して来院した(図A)。根管治療を実施し、経過は良好である(図B)。
歯周外科治療後の歯髄感染の原因は何だろうか?
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執筆者
日本歯周病学会臨床ポスター賞・ベストデンタルハイジニスト賞(共著)、日本歯科保存学会認定医優秀症例発表賞、日本歯内療法学会大会会長賞を受賞。