・木村歯科研修会主宰の木村英隆先生が、広汎型侵襲性歯周炎患者に対して咬合再構築を行った一症例を紹介! ・初診時〜現在のメインテナンスまでの症例を振り返ってどのように感じた? |
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はじめに
みなさん、こんちには。木村歯科研修会主宰を務める木村英隆と申します。
今回は、今回は、広汎型侵襲性歯周炎患者に対して再生療法を適応し、天然歯にて咬合再構築を行った一症例を提示し、初診時〜現在のメインテナンスまでを振り返ります。
この症例が、少しでも歯周治療の明日に繋がる“学び”としてご覧いただければと思います。
広汎型侵襲性歯周炎患者に対して再生療法を適応し天然歯にて咬合再構築した症例
患者概要
患 者:57歳男性
初 診:2020年8月21日
主 訴:全顎的な治療を希望、抜けそうな歯がある
生活歴:非喫煙者、来院時血圧:80~120mmHg
歯周精密検査
初診時の歯周組織検査表、口腔内写真およびX線写真(パノラマX線写真、14枚デンタルX線写真)を以下に示す。プロービング深さは全顎8~13mm認められ、動揺度は1~3度、BOP、PCRはともに100%であった。またX線写真において、重度の骨吸収が認められた。
初診時の口腔内写真
初診時のパノラマエックス線写真
初診時の14枚デンタルエックス線写真
初診時の歯周精密検査の結果
広汎型侵襲性歯周炎:Stage IV, Grade C
初診時の結果から、広汎型侵襲性歯周炎:Stage IV, Grade Cと診断し、治療計画を立案、実施した。
① 歯周基本治療
根尖まで完全に骨吸収が認められる#25、#31、#44および智歯#38、#48は抜歯と判断した。
その他の歯は浸潤麻酔のもとスケーリング・ルートプレーニングを行い、動揺度が認められる部位は暫間固定を行った。また固定が予測される上顎前歯部は便宜抜髄を行った。
② 再評価:歯周外科手術の確定
プロービング深さが6mm以上および垂直性骨欠損が認められる部位はエムドゲインによる再生療法を、その他の4mm以上の部位は歯肉剝離搔爬術(切除療法)を計画した。
③ 歯周外科治療
1/3顎に分けて上顎右側臼歯部から、以下の順番でエムドゲインによる再生療法を開始。
・2021年4月2日:#17、#16、#15、#14
・2021年5月14日:#24、#26、#27
・2021年6月18日:#47、#46、#45
・2021年8月19日:#33、#34、#35、#36、#37
再生療法を行った部位は欠損部の搔爬と根面のルートプレーニングを行い、エムドゲインのみを塗布し改良垂直マットレス縫合を行った。歯肉剝離搔爬術では全層弁を剝離し根尖側移動にて対応した。
2021年4月2日:#17、#16、#15、#14(症例写真の一部)
2021年5月14日: #24、#26、#27:#17、#16、#15、#14(症例写真の一部)
2021年6月18日: #47、#46、#45(症例写真の一部)
2021年8月19日:#33、#34、#35、#36、#37(症例写真の一部)
***
歯周外科治療後の2021年8月31日に撮影した上顎デンタルX線写真撮影を以下に示す。
歯周外科治療後の上顎デンタルエックス線写真
デンタルX線写真から、臼歯部の歯槽骨再生を確認。前歯部は水平性骨吸収であったため、歯肉剝離搔爬術を選択した。#43、#42、#41は再生療法の適応症ではあったが、経済的理由により切除療法を行った。
・2021年10月22日:#13、#12、#11、#21、#22、#23
・2021年11月26日:#43、#42、#41
2021年10月22日:#13、#12、#11、#21、#22、#23(症例写真の一部)
2021年11月26日:#43、#42、#41(症例写真の一部)
⑤ 咬合機能回復治療
2022年3月2日に撮影した14枚法デンタルX線写真を以下に示す。骨欠損の治癒を確認した。
歯周外科治療後の14枚法デンタルエックス線写真
また、再評価により動揺が認められる以下の部位は連結固定とした。
・#14、#15
・#13、#12、#11、#21、#22、#23
・#34、#35、#36、#37
・#41、#42
加えて、欠損歯はクラウンブリッジとした。そのため平行性を考慮し#13は便宜抜髄を行ったが、その他の部位は生活歯にて対応した。上顎前歯部の咬合はテンポラリークラウンにて咬頭嵌合位および側方運動を確認した。
上顎前歯部のテンポラリークラウン
#41、#42は歯根が近接し(歯根が接触していた)、#41と#31に歯間離開がみられたため、MTMにて#41、#42を近心に歯体移動した。
#41、#42のMTM
⑥ メインテナンス
2024年1月、メインテナンスに移行した(初診時から3年4ヵ月)。
プロービング深さは概ね4mm以下、動揺度0で安定している。現在では毎月メインテナンスを行うことでPCRは10%以下を維持している。
初診時から3年4ヶ月後の口腔内写真
初診時から3年4ヶ月後の14枚デンタルエックス線写真
初診時から3年4ヶ月後の歯周精密検査の結果
左:初診時 右:初診時から3年4ヶ月後
症例を振り返って
今回の症例では、大臼歯を保存できたため、咬合口径はほとんど変化がないと思われます。また、臼歯部および前歯部と全顎的に補綴治療を行うことで、咬頭嵌合位および下顎運動は安定しています。
デンタルX線写真においても骨の再生および歯槽硬線の明瞭化が確認できました。
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執筆者
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