歯科医療のデジタル化が確実に進んでいる現在。
廉価版の口腔内スキャナーも、各社から販売されるようになった。しかし、実際に医院に導入するとなると「大手歯科医院でないと使いこなせない?」「従来法で間に合っているし…」などと考え、二の足を踏んでいる先生も多いではないだろうか。
今回WHITE CROSSでは、デジタルデンティストリーのパイオニア、小池軍平先生のクリニック(神奈川県横須賀市)を訪問した。
前編では、主にコミュニケーションツールとしてのデジタルについてお話しいただいた。
前編はこちら(訪問取材!デジタルデンティストリー小池軍平先生 前編」)
後編では、デジタルの向き合い方についてや、歯科技工の将来についてなどについて語っていただいた。
文末にインタビュー時の動画もあるので、ぜひご覧いただきたい。
デジタルとアナログの住み分けを考える
先生ご自身で技工はされていますか。
今自分で技工をするのはプロビジョナルまでで、そこからは歯科技工士におまかせしています。
ただ、つい最近までセラミックは自分で焼いていましたね。前のクリニックではキャストまで自分でやっていましたよ。
大量にでてきた削り出し後のブロック
前歯部などの技工物は、ドクターは「できるけどやらない」というスタンスの方が良いと思います。
製作に時間をかけるよりも、患者さんとコミュニケーションをとってラポールを築き上げる時間を増やした方が良いと考えているんですよね。
コストのことを考えても、時間も早く腕も良い歯科技工士にお願いした方が良いでしょう。おまかせすることで、歯科技工士も腕を振るうじゃないですか。
我々の仕事は歯科技工士がいないと成り立たないんです。
技工室に設置されたセレックとテンポラリー用のブロック
アナログでしかできない技術は、絶対に残ると思います。
一方、デジタルに取って代わられしまうレベルの歯科技工士はいなくなると思います。機械に取って代わられるならば、その方が良いでしょう。
「デジタルだからできた」ではなくて、アナログをある程度突き詰めたプロフェッショナルが「デジタルを用いる」ことで、よりデジタルが活きるのだと思います。
その他の技工物などはどうされていますか。
模型も、最近は石膏でなくなってきていますね。今は、口腔内スキャナーでとったデータを技工所に送り、技工所の3Dプリンターで模型にしてもらっています。
3Dプリンターで作られた模型
歯冠修復に関してはある程度デジタルでできるようになったと思うのですが、デンチャーは相変わらずです。導入コストも高く、まだ黎明期だと感じています。
日本でのデンチャーのデジタル化はどうなっていくでしょうね。海外はデンチャー製作にかかる費用を患者さんに転嫁できることもあり、デジタルの導入が進んでいます。日本だと国民皆保険で値段が決まってるので、コストをかけて作る理由が今のところないんですよね。
日本でも歯科技工士が少なくなるとデジタル化が進むかな、とも思うのですが、そうなる頃にはデジタルデータで海外に技工物を外注する人が多くなると思います。
日本もゆくゆくはデジタルデータでの技工が主流になっていくのでしょうか。
日本の場合は保険制度もありますし、法律が厳しいですからね。ただ、ちゃんとした決まりがあるからこそ、日本の歯科技工士はすごく技術が高いのだと思っています。
女性の働き方についてや働き方改革など、働き方の見直しが進んでいますが、そういった切り口からもデジタル化は進んでいくのではないかと思います。
日本でのデジタル化について語る小池先生
例えば子育てをしながら、自宅でCAD/CAMのデータを作成できるようになって、さらに専門職としての報酬がいただけるという流れになればいいでしょうね。
CADデザインに関しては、パソコンとネット環境があればどこでも仕事ができますから。
生まれた時から携帯電話やスマートフォンがあった世代が、これからどんどんこの業界に入ってきます。その世代にあわせて、働き方も変わっていくことを期待したいですね。
インタビューの様子はこちらからご覧いただけます
WHITE CROSSライブからのお知らせ
小池先生がライブセミナーに登壇します。デジタルでの長期症例や、コミュニケーションツールとしての使用方法、診療報酬改定の話など、具体的な実例を中心にお話いただきます。この機会にぜひご覧ください!
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。