患者の治療内容だけでなく、セルフケアの状況や生活習慣などを日々記録するサブカルテ。多くの歯科医院では、いまだ紙カルテを用いた記録が主流となっている。
一方で、近年は医療法人化する歯科医院が増え、昔ながらの「院長先生一人の歯科医院」や「院長先生とスタッフ一人の二人三脚」といったスタイルが減りつつあることは周知の事実である。
チームで患者情報を共有することが増えている中で、サブカルテの管理および患者情報の引き継ぎをスムーズに行えている歯科医院はどれくらいあるのだろうか。
今回WHITE CROSSでは歯科医師会員200名に向け、サブカルテについてのアンケート調査を行った。
歯科医院でデジタル化したい業務No.1「紙のカルテ(サブカルテ)」
数ある歯科医院の業務のうち、デジタル化したい業務としてもっとも回答が多かった項目は「紙のカルテ(サブカルテ)」。
全体の半数以上である51.0%を占める結果となり、受付や予約、機材・材料の発注、在庫管理等の業務よりも効率化ニーズが高いことが明らかになった。
多くのスタッフが扱うものであるだけに、効率化の効果は大きいと捉えているのではないか。
Q1.クリニックにおいて、デジタル化により利便性を高めたい・効率化したいと思う業務を教えてください(n=200、複数回答可)
また、サブカルテのデジタル化に賛同する歯科医師は、全体の8割を超える結果となった。
Q2.紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化についてどう思っていますか(n=200、単一回答)
さらに、サブカルテのデジタル化に向けたツールの導入を考えている歯科医師は全体の5割を超えた。
Q3.紙のカルテ(サブカルテ)のデジタル化について、クリニックの状況を教えてください(n=200、単一回答)
なぜサブカルテのデジタル化が必要だと思われているのか
では、なぜ多くの歯科医師がサブカルテのデジタル化について肯定的な意見をもっているのだろうか。
サブカルテの使用にあたって困っていることについて質問した結果、以下のような回答が得られた。
1位:保管する場所が足りない…60.5%
2位:翌日のカルテの準備に時間がとられている…35.0%
3位:手書き文字を他の人が読むことができない…23.0%
Q4.紙のカルテ(サブカルテ)の利用でどのようなことでお困りですか(n=200、複数回答可)
もっとも多かったのは、カルテの保管場所についての回答。長期で患者さんを診ていくことが前提の歯科医院にとって、必ず直面する課題の一つではないだろうか。
予防歯科に力をいれる歯科医院が増加した現代だからこそ、患者のセルフケアの状況や生活習慣、癖などを事細かに記入するサブカルテは、年数が経てば経つほどに、また一生懸命指導すればするほどに、厚みを増していく。そうすると、カルテファイルがパンパンになるような患者も自ずと増えていくに違いない。
紙カルテのデジタル化を検討する歯科医師がもっとも注目しているツールとは?
では、サブカルテのデジタル化に肯定的で、かつデジタルツールの導入を検討している歯科医師は、どのようなツールに注目しているのだろうか?
ひとくちに、紙カルテのデジタル化ツールといっても、文書管理システム(ファイリング)のようなものもある。
編集部では、保管の問題だけでなく、患者情報の記入から情報共有までをデジタル化する“デジタルノートアプリ”に着目し、アンケートで調べてみた。
その結果、紙のカルテのデジタル化に肯定的な回答をした歯科医師で、かつ実際にツールの導入を考えている歯科医師では、以下の結果が得られた。
1位:Dental eNote…70.0%
2位:Digital Sub Note…14.3%
2位:Dentis…14.3%
4位:Medical Box Note…12.9%
Q5.サブカルテ機能をもつツールの中で知っているものをお選びください(n=70)
2位以下に圧倒的な差をつけ、MetaMoJi社の『Dental eNote』の認知度が高いことが示された。
同社のツールは、紙カルテと同様の感覚で記入ができる点や、1人の患者のサブカルテに対して複数の人が離れた場所から書き込める「ライブ共有」の点で優れており、実際に利用している歯科医師の推奨の声が多くあるのがその一因かもしれない。
院内のチームワーク活性を図るためにも、サブカルテのデジタル化は有効?!
また、現在の歯科医院内のチームワークや患者サービスについての質問では、以下のような回答が得られた。
1位:スタッフ間での日々の情報共有の時間が十分にとれていない…38.5%
2位:治療計画を患者さんと共有・合意ができているかどうか不安…33.5%
3位:患者さんからの急な問い合わせに即座に回答ができない…30.0%
4位:診療開始時、患者情報の把握に時間がかかっている…28.5%
5位:スタッフと治療の流れについて情報共有できていない…25.0%
Q6.クリニック内のチームワークや患者サービスについて該当するものを教えてください(n=200、複数回答可)
もっとも多かった回答は、「スタッフ間での日々の情報共有の時間が十分にとれていない」という結果となった。
患者担当制でない歯科医院や、担当制であっても急遽担当を変更しなくてはならない場合、日々の情報共有が十分にできていないと、治療に入る前の患者情報を把握するまでに時間がかかってしまう。そのことは、4位の「診療開始時、患者情報の把握に時間がかかっている」という回答にも反映されていると考えられる。
多くの患者情報が記載されるサブカルテのデジタル化は、情報が素早く取り出せ、スタッフ間での共有がしやすいことから、こういったチームワークの問題を解決する一つの手段となるかもしれない。
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今回の調査では、日々使い続けている紙のサブカルテについてデジタル化のニーズが高いことが示された。
多くのスタッフが使用し、紙であることを前提として確立された業務の流れを変えることは、ハードルが高いと思われるかもしれない。しかしながら、社会環境の変化に合わせ長期の目線で医院のあるべき姿を模索することが、今まさに経営者に求められているのではないだろうか。
サブカルテをデジタル化する「デジタルノートアプリ」製品情報
今回のアンケート調査において、多くの歯科医師がチェックしていたデジタルノートアプリは、以下のサイトからそれぞれのサービスの詳細を確認できる。
資料のダウンロードや無料体験を実施しているサービスもあるため、興味をもたれた先生は、ぜひこの機会に詳しい情報を手に入れていただきたい。
① Dental eNote:製品情報はこちら
② Digital Sub Note:製品情報はこちら
③ Dentis:製品情報はこちら
④ Medical Box Note:製品情報はこちら
執筆者
WHITE CROSS編集部
臨床経験のある歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科関連企業出身者などの歯科医療従事者を中心に構成されており、 専門家の目線で多数の記事を執筆している。数多くの取材経験を通して得たネットワークをもとに、 歯科医療界の役に立つ情報を発信中。